薬剤師国家試験 第107回 問294-295 過去問解説

 問 題     

62歳男性。身長161cm、体重58kg。半年ほど前から腋窩のしこりに気づいていたが、徐々に増大してきた。

1ヶ月前よりだるさと38℃の発熱が継続し、朝起きたときに下着が濡れているほどの汗をかくようになった。体重も減少してきたため、心配になって病院を受診した。

患者の検査値等は以下のとおりである。

(検査値及び所見)

AST 51IU/L、ALT 38IU/L、LDH 2,543IU/L、γ-GTP 224IU/L、血清クレアチニン値 1.62mg/dL、尿酸 8.4mg/dL、血清Na 136mEq/L、血清K 4.5mEq/L、血清Ca 10.0mg/dL、血清P 3.0mmol/L、血清アルブミン 4.0g/dL、HbA1c 5.8%(NSGP値)、白血球数 15,000/μL、赤血球数 250×104/μL、Ht 35%、腋窩の腫瘍径は5cm

精査の結果、悪性リンパ腫と診断されたが、リンパ節生検でリード・ステルンベルグ(Reed-Sternberg)細胞などの巨細胞は確認されなかった。

問294

この患者の病態及び検査に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 非ホジキンリンパ腫の症例と考えられる。
  2. 発熱、大量の寝汗及び体重減少は、B症状の典型的症状である。
  3. 血清カルシウム値が高いため、骨破壊が進んでいる可能性が高い。
  4. 遺伝子検査では、フィラデルフィア染色体が検出される可能性が高い。
  5. 腎機能低下は、ベンス・ジョーンズタンパク質の増加による可能性が高い。

問295

この患者は入院してR-CHOP療法を施行することになった。

治療を開始する前の薬剤師の対応として、適切でないのはどれか。1つ選べ。

  1. ラスブリカーゼの投与を提案する。
  2. 血糖測定を提案する。
  3. B型肝炎ウイルスへの感染の有無を確認する。
  4. ビンクリスチンの累積投与量が上限を超えないことを確認する。
  5. 心不全がないことを確認する。

 

 

 

 

 

正解.
問294:1, 2
問295:4

 解 説     

問294

選択肢 1,2 は妥当です。
B 症状とは、特徴的全身症状のことです。

選択肢 3 ですが
本試験時点において、血清カルシウム値の基準値は 8 後半~ 10 前半です。高値とはいえません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
フィラデルフィア染色体が高頻度に認められるのは、慢性骨髄性白血病です。(105-59)。悪性リンパ腫と診断されており、慢性骨髄性白血病ではないため、フィラデルフィア染色体が検出される可能性は低いと考えられます。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
ベンスジョーンズタンパクとは、免疫に関与する γ - グロブリンというタンパク質の破片です。多発性骨髄腫において上昇するタンパク質です。通常は尿中に認められませんが、多発性骨髄腫を発病すると血中に増加したこのタンパク質が、尿中に見られるようになります。(97-181)。多発性骨髄腫ではないので、選択肢 5 は誤りです。

以上より、問 294 の正解は 1,2 です。

参考 病態・薬物治療学まとめ 血友病、悪性リンパ腫、紫斑病、白血球減少症、血栓・塞栓

問295

選択肢 1 は妥当です。
抗がん剤投与に伴う腫瘍崩壊症候群の予防のための提案として妥当です。(99-295)。

腫瘍崩壊症候群とは、がん細胞が短時間に大量に死滅し内容物であった尿酸などが大量に排出されることに伴う症状の総称です。血液がんに対する初回化学療法などで特に注意が必要です。(101-290)。

選択肢 2 ですが
プレドニゾロンがステロイドなので、ステロイドの副作用である高血糖を考慮した提案として適切と考えられます。(105-246 選択肢 3 など)。

選択肢 3 ですが
リツキシマブ投与により、B 型肝炎ウイルスの再活性化による肝炎発症が認められることがあるため確認します。(103-286)。

選択肢 4 ですが
生涯の累積投与量(総投与量)が定められている代表的な抗がん剤としては、アントラサイクリン系があげられます。代表例はドキソルビシンです。上限量を超えると心毒性が高い割合で発現します。(103-286104-274)。ビンクリスチンについては、累積投与量の確認は不要です。選択肢 4 は適切ではありません。

選択肢 5 ですが
ドキソルビシンの副作用である心毒性を考慮した提案として適切と考えられます。

以上より、問 295 の正解は 4 です。

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