薬剤師国家試験 第108回 問159-160 過去問解説

 問 題     

65 歳女性。5 年前より高血圧症を指摘されていたが、自覚症状がなく放置していた。数日前より頻回に動悸と気分不良を自覚するようになり、循環器内科を受診した。

血圧 124/86 mmHg、心拍 96 拍/分 (不整) であった。心電図などの諸検査の結果、心房細動と診断され、抗凝固薬が投与されることになった。

問159

この患者の病態と治療に関する記述として、正しいのはどれか。2 つ選べ。

  1. 心電図所見では、P 波が消失し、不規則な RR 間隔が認められる。
  2. 心房細動の重症度判定に、NYHA 分類が用いられる。
  3. 心拍数の調節には、リドカイン点滴静注を用いる。
  4. 1 回拍出量は、心房細動の発症前と比べて低下している。
  5. 無治療で洞調律に戻ることはない。

問160

抗凝固薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2 つ選べ。

  1. ナファモスタットは、アンチトロンビンと複合体を形成して、第 Ⅹa 因子を阻害する。
  2. ダナパロイドは、アンチトロンビン非依存的に第 Ⅹa 因子を直接阻害する。
  3. リバーロキサバンは、トロンビンに結合してプロテイン C を活性化することで、トロンビンを直接阻害する。
  4. ワルファリンは、ビタミン K エポキシド還元酵素を阻害することで、ビタミン K 依存性凝固因子の生成を阻害する。
  5. ダビガトランエテキシラートは、体内で活性代謝物となり、トロンビンを直接阻害する。

 

 

 

 

 

正解.
問159:1, 4
問160:4, 5

 解 説     

問159

選択肢 1 は妥当です。
参考 107-298299 60代女性 心房細動の症例 

選択肢 2 ですが
NYHA 分類は、自覚症状の程度による評価に基づく、心不全の重症度分類です。(参考 105-163164 50代男性、健康診断で高血圧も放置、心肥大の症例)。心房細動の重症度判定に用いられる分類ではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
リドカインは、心室性不整脈に有効な不整脈治療薬です。心房細動と診断されている本症例において適切ではないと考えられます。

ちなみに、心拍数の調節(リズムコントロール)には、ピルシカイニド(サンリズム)、シベンゾリン(シベノール)、プロパフェノン(プロノン)、フレカイニド(タンボコール)などが用いられています。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当です。
心房の動きが速くなり、心室に血液がたまる前にどんどん全身に送り出されてしまうため、1回拍出量は少なくなります。

選択肢 5 ですが
心房細動には、1週間以内に自然に止まって元のリズムに戻る発作性心房細動があります。洞調律とは、通常のリズムということです。無治療で戻ることがないわけではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、問 159 の正解は 1,4 です。

問160

選択肢 1 ですが
ナファモスタットは、外分泌腺から分泌された消化酵素を阻害して、膵臓の自己消化を抑制するタンパク質分解酵素阻害薬です。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
ダナパロイドはヘパリン類似物質です。アンチトロンビン III の作用を増強、セリンプロテアーゼ(トロンビン、第 Xa 因子等)の活性を抑制します。アンチトロンビン III によるトロンビン阻害作用に比べ第 Xa 因子阻害作用が強いです。アンチトロンビン非依存性ではありません。(103-159 播種性血管内凝固症候群(DIC)の治療薬)。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
リバーロキサバンは、選択的かつ直接的第 Ⅹa 因子阻害剤です。トロンビン産生及び血栓形成が抑制されます。トロンビンに結合して直接阻害するわけではありません。(参考 105-222 術前中止薬)。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4,5 は妥当です。

以上より、問 160 の正解は 4,5 です。

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