107回薬剤師国家試験 問298-299解説

 問 題     

62歳女性。身長153cm、体重56kg。動悸及び息切れを自覚し、近医を受診したところ非弁膜症性心房細動と診断され、以下の処方で治療を開始することになった。患者の検査値等は以下のとおりである。

(所見及び検査値)

血圧 140/86mmHg、心拍数 160拍/分、脈拍数 90拍/分、AST 23IU/L、ALT 28IU/L、eGFR 40mL/min/1.73m2

(心電図)

RR間隔不規則、P波消失、f波出現

問298

治療薬の処方意図として、適切なのはどれか。2つ選べ。

  1. 心拍数の調節(レートコントロール)
  2. 洞調律の維持(リズムコントロール)
  3. 冠動脈血栓の予防
  4. 肺塞栓症の予防
  5. 脳塞栓症の予防

問299

3ヶ月経過後、患者が処方箋を持って来局した。処方が以下の内容に変更されていた。

処方内容の変更について薬剤師が患者に確認したところ、以下の答えが返ってきた。

「薬の量を決めるために検査を繰り返していたが、主治医から食事について質問され、時折青汁を飲んでいることを伝えたところ、薬を変えることになった。」

患者の所見及び検査結果は以下のとおりである。

(所見及び検査値)

血圧 130/85mmHg、心拍数 120拍/分、脈拍数 75拍/分、AST 25IU/L、ALT 26IU/L、eGFR 35mL/min/1.73m2、PT-INR 2.3

今回の処方変更について、薬剤師の対応として、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. ワルファリンカリウム錠の服用を中止し、その翌日よりダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩カプセルを開始するよう患者に説明する。
  2. ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩カプセルを服用し忘れた場合、できるだけ早く1回量を服用し、次の服用まで6時間以上空けるよう指導する。
  3. 青汁やほうれん草などの緑黄色野菜の摂取は、控えるように患者に指導する。
  4. 他科や他院でP-糖タンパク質を阻害する薬剤が処方されていないことを確認する。

 

 

 

 

 

正解.
問298:1, 5
問299:2, 4

 解 説     

問298

心房細動は、不整脈の一種です。血液循環が滞ることで血栓ができやすくなり、できた血栓が血流に乗って脳梗塞などへとつながる恐れがあります。(99-57)ワルファリンカリウムの処方意図は、心房細動に伴う脳塞栓症の予防と考えられます。

ビソプロロールは、選択的 β1 遮断薬です。心拍数と収縮力を減少させます。心拍数の調節が処方意図と考えられます。

以上より、問298 の正解は 1,5 です。

問299

選択肢 1 ですが
ビタミン K 拮抗薬(ワルファリン)からダビガトラン(プラザキサ)へ切り替える際には、ワルファリンを投与中止し、PT – INR が 2.0 未満になれば投与可能です。現在 PT-INR が 2.3 なので「翌日から開始」という点が適切ではありません。疑義照会対象と考えられます。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当です。

選択肢 3 ですが
ダビガトランについて、ワルファリン投与時のような、ビタミン K 含有食品についての注意は不要です。ちなみに、PT-INR のモニタリングも不要となります。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当です。
ダビガトラン(プラザキサ)は、イトラコナゾールとの併用が禁忌です。P-gp 阻害により、血中濃度上昇し、出血リスク上昇が知られています。(105-273)。

以上より、問299 の正解は 2,4 です。

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