公務員試験 H30年 法務省専門職員 No.55解説

 問 題     

機能やシステムに関する理論についての記述として最も妥当なのはどれか。

1.B.マリノフスキーは,『親族の基本構造』において,未開社会のフィールドワークを行い,そのような社会に見られる聖と俗などの神話的な思考様式を,非科学的で野蛮な「野生の思考」と呼び,それを文明社会に見られる科学的思考と比較することで,未開社会と文明社会の本質的な差異を明らかにした。

2.T.パーソンズは,『経済と社会』において,AGIL 図式を提唱し,社会システムの機能要件として,適応,目標達成,統合,潜在的パターン維持の四つを挙げ,それらに応じて分化した四つのサブシステムの相互依存関係を分析した。

3.R.マートンは,『オートポイエーシス』において,社会システム全体を構成する諸部分が,システム全体の維持・存続に対してプラスの貢献をする場合に,その作用を顕在的機能と呼び,マイナスの貢献をする場合に,その作用を順機能と呼んだ。

4.N.ルーマンは,『コミュニケーション的行為の理論』において,社会システムは行為を要素とする自己言及的システムであることを定式化したほか,貨幣・権力によるシステムの秩序形成の原理が生活世界に侵入し,言語的コミュニケーションに取って代わって行為調整の役割を担うことを「生活世界の植民地化」と呼んだ。

5.I.ウォーラーステインは,『近代世界システム』において,世界システム論を提唱し,世界を中核及び周辺の二層構造と捉えた。また,産業,金融及び軍事などの点で圧倒的優位に立つ中核国家を覇権国家と呼び,16 世紀以降に出現した覇権国家として,17 世紀におけるスペイン,18 世紀におけるオランダ,19 世紀における英国,20 世紀における米国の四つの国を挙げた。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

選択肢 1 ですが
「親族の基本構造」や「野生の思考」の著者はレヴィ=ストロースです。構造主義を提唱し、未開社会にも文明社会に匹敵する合理的思考が存在することを指摘しました。B.マリノフスキーは、人類学研究において、参与観察による研究手法を確立させたイギリスの人類学者です。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当です。
パーソンズの AGIL 図式についての記述です。

選択肢 3 ですが
オートポイエーシスとは、自己が自己の要素を産生することです。チリの生物学者マトゥラーナとバレーラにより提唱され、ルーマンが社会システム理論に援用することで、人文学的にも広く知られるようになりました。R.マートンは社会を分析する際の「機能」という言葉について、分類しました。結果が望ましい→順機能、結果が望ましくない→逆機能です。(参考 H27no52)。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
記述はハーバーマスについてです。フランクフルト学派の一人です。(参考 H28no54)。ルーマンは、オートポイエーシスを社会システム理論に援用しました。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
ウォーラーステインは「近代世界システム」において世界システム論を提唱し、世界を「中央、半周辺、周辺」の三層構造と捉えました。二層構造ではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

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