公務員試験 H30年 法務省専門職員 No.54解説

 問 題     

逸脱に関する理論のうち,T.ハーシの理論に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.彼は,刑務所,軍隊,精神科病院などで数多くの人の体を計測することによって,犯罪者に特有の身体的特徴があることを指摘し,そうした特徴を持った人は,生まれつき犯罪者になることを運命付けられているとした。

2.彼は,社会構造に着目し,社会の人々に共通する文化的目標と,文化的目標を達成するための合法的な手段である制度的手段との間に生じる緊張状態が人を逸脱へと駆り立てると考え,その緊張状態に対する五つの適応様式のうち,「革新(innovation)」などの四つを逸脱とみなした。

3.彼は,犯罪行動が後天的に学習されるメカニズムに着目し,犯罪遂行の技術,特殊な動機,衝動,合理化,態度などが学習されるか否かは,犯罪的文化との接触の頻度,期間,強度などによって決定されると主張した。

4.彼は,人は誰もが犯罪を行う可能性があるという前提に立ち,社会的な絆(ボンド)が逸脱行動を抑制している要素であると考え,その社会的な絆を構成する要素として,「愛着(attachment)」をはじめとする四つの要素を挙げた。

5.彼は,逸脱を行う側ではなく,ある行為に逸脱というレッテルを貼る側に焦点を当て,人は,
他者によって逸脱者というレッテルを貼られ,他者から逸脱者として扱われることによって,逸
脱的アイデンティティと逸脱的生活スタイルを確立すると考えた。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

ハーシ(Hirschi, T.)は、社会的絆理論を提唱しました。全ての人は非行や犯罪に走る潜在的な可能性を有しているという前提の下、なぜ人は犯罪を行わないのかという視点から、犯罪の抑止要因として社会的絆の存在を主張した。参考 H28no12

選択肢 1 ですが
犯罪学の父と言われたロンブローゾに関する記述です。ハーシの理論ではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
マートンのアノミー論についての記述です。ハーシの理論ではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
サザランドの分化的接触理論です。ハーシの理論ではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当です。
ハーシの社会的絆理論についての記述です。

選択肢 5 ですが
ベッカーのラベリング論です。ハーシの理論ではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 4 です。

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