公務員試験 H28年 法務省専門職員 No.54解説

 問 題     

フランクフルト学派に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.J.ハーバーマスは,『エスノメソドロジー』などを著した。そして,彼は,M.ヴェーバーによるコミュニケーション的行為に関する理論を批判し,目的合理的行為,宗教的行為などの四つの行為の類型を示した。

2.M.ホルクハイマーは,『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト』などを著した。そして,彼は,資本主義の発展とともに,ゲノッセンシャフトが衰退していき,ゲマインシャフトやゲゼルシャフトが優勢になってきたことを指摘した。

3.T.W.アドルノは,『シンボリック相互作用論』などを著した。また,彼は,20 世紀末の地方都市に建設されたショッピングモールのことをパサージュと名付け,資本主義社会を分析する際の中心的な形象にパサージュを位置付けた。

4.E.フロムは,『自由からの逃走』などを著した。また,彼は,同一の集団,階層,文化に属する成員の大部分が共有するパーソナリティ構造の中核を意味する概念を,社会的性格と定義付けた。

5.W.ベンヤミンは,『権威主義的パーソナリティ』などを著した。そして,彼は,権威ある者に対しては反抗する一方,弱い者に対しては自らの権威を利用し,自らの力を誇示して絶対的な服従を要求するといった,一連のパーソナリティ特性を権威主義的パーソナリティとした。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

フランクフルト学派は、ドイツのフランクフルト研究所の研究グループです。ホルクハイマーが、ナチスの残虐行為などから「道具的理性」を提唱し、アドルノが、強者や権威に迎合する権威主義的パーソナリティを指摘しました。

フランクフルト学派の代表的な人物としては、他に「複製技術時代の芸術作品」のベンヤミン、「自由からの逃走」の著者フロムなどがあげられます。

選択肢 1 ですが
「エスノメソドロジー」は「ガーフィンケル(参照 H26 no54)」が提唱しました。ハーバーマスは「公共性の構造転換」などの著者です。ハーバーマスさんは、道具的理性がコミュニケーションの源となっていて、対話的理性を抑制している。公共圏を取り戻そう、といった内容がキーワードです。

選択肢 2 ですが
「ゲマインシャフトとゲゼルシャフト」の著者はテンニースです。(参照 H27 no56)。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
『シンボリック相互作用論』は「ブルーマー」です。ブルーマーは、ミードの社会心理学を基礎として、シンボリック相互作用論を確立した人です。また、パサージュについて論じたのはベンヤミンです。

選択肢 4 は妥当な記述です。

選択肢 5 ですが
「権威主義的パーソナリティ」は「アドルノ」です。ベンヤミンではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 4 です。

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