公務員試験 H27年 法務省専門職員 No.56解説

 問 題     

社会集団の類型に関する記述 ア~エ のうち妥当なもののみを挙げているのはどれか。

ア. R. M. マッキーヴァーは、共同体に人為的計画的に形成される社会を基礎社会とし、そこから発展した社会で、住民が帰属意識をもつ社会を派生社会とした。

イ. C. H. クーリーは、人間の本質そのものを表す本質意志によって結合した統一体をゲゼルシャフト、諸個人が互いに自己の目的を達成するために、選択意志に基づいて形成した社会関係をゲマインシャフトと名付けた。

ウ. W. G. サムナーは、ある個人がそこに所属し、帰属感や愛着心をもちそこに所属する人々を「われわれ」として意識し得る集団を内集団とし、逆に違和感や敵意をもち、そこに所属する人々を「かれら」としてしか意識し得ない集団を外集団とした。

エ. F. H. ギディングスは、血縁的群居又は地縁的集合から自生的に発生し、成員の類似よりも集団相互の類似の方が著しい集団を生成社会とし、類似の目的や活動のために人為的に作られる集団を組成社会とした。

1. ア イ
2. ア ウ
3. ア エ
4. イ エ
5. ウ エ

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

記述 ア ですが
「基礎社会、派生社会」は、社会学者高田保馬により提示された社会類型です。基礎社会が、血縁・地縁といった自然的、直接的なつながりで結合している社会です。派生社会が、基礎社会を出発点として派生した社会のことです。マッキーヴァーの提唱した人為的計画的に形成される社会は「アソシエーション」です。また、一定の地域のうえに展開される自生的な共同生活を「コミュニティ」といいます。記述 ア は誤りです。

記述 イ ですが
ゲマインシャフトとゲゼルシャフトは、テンニースが唱えた概念です。ゲマインシャフトは「共同体組織」と呼ばれます。記述アの基礎社会のようなものです。一方、ゲゼルシャフトは「利益社会」と呼ばれます。団体に加わって得られる利益が、成員の関心の中心である点が特徴です。

クーリーは、社会的自我が形成される場である家族、仲間集団、近隣集団などの基本的社会集団を第一次集団と呼びました。社会的自我は、人間が他者の反応に対する自我の反応として形成されるとし、これを説明するために「鏡に映った自我」という概念を提唱しました。記述 イ は誤りです。

記述 ウ、エ は妥当です。

以上より、妥当な記述は ウ、エ です。正解は 5 です。

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