問 題
社会学の理論に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。
1.G.ジンメルは,諸個人が,関心や目的,あるいは感情に促され,他者を志向し,他者に作用を及ぼし,他者から作用を受ける過程を心的相互作用と呼んだ。彼は,社会を成り立たせるのは,諸個人の間の心的相互作用であると主張した。
2.L.ワースは,企業の管理部門が集積している場所を「都市」と定義した上で,アーバニズムを,複数の帰属意識を同時に持ち得るような寛容さを持った都市的生活様式であるとした。彼は,アーバニズムに満たされた都市では,個人は国家を超えたアイデンティティを確立できるとした。
3.T.パーソンズは,社会の多様化の進行により社会が複雑化しているとし,その複雑性を縮減するためのシステムとして,AGIL 図式を提唱した。また,彼は,人々が行為するときに採り得る選択の基準を,二者択一的な変数の組合せで説明できるとする N.ルーマンの主張を批判した。
4.C.W.ミルズは,産業化に伴い社会が複雑に機能分化することによって,権力や富を掌握する「パワー・エリート」と呼ばれる支配階級は,必然的に解体すると主張した。そして最後には,経済・政治・教育・芸術などの各分野を個別に先導するエリートが台頭すると論じた。
5.E.ゴフマンは,他者の過ちや罪を償うために犠牲にされる者の存在を「スティグマ」と呼んだ。彼は,共同体が解体の危機に瀕したとき,社会の秩序を回復させる役割をスティグマが担っているとし,時代や地域を問わずスティグマが生み出されているとした。
解 説
選択肢 1 は妥当です。
参考 法務専門職 H28no52
選択肢 2 ですが
L.ワースは、都市を「社会的に異質な諸個人の、相対的に大きい、密度のある、永続的な集落」と定義しました。そして、都市に特徴的な生活様式を アーバニズム と呼び、その特性として、非個性化、家族的紐帯の弛緩などを挙げました。(H26no57)。都市の定義が違います。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
構造=機能主義を代表する社会学者 T.パーソンズは,システムが均衡し存続するために充足しなければならない要件として,A(適応),G(目標達成),I(統合),L(潜在的パターンの維持)の四つを挙げ,システムを分析するための概念用具として AGIL 図式を示しました。(H28no57)。複雑性を縮減させるためのシステムとして提唱していません。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
C. W. ミルズは、国家権力を独占するエリート層であるパワー・エリートを、経済・政治・軍事の三つの制度的秩序の頂点に立って、連合して支配的地位を占めている人々であると特徴付けました。権力の一元化が進行しているという指摘であり、必然的に解体するという主張は、妥当ではありません。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
スティグマとは「通常その人が求められる属性から逸脱した属性」のことです。(H28no59)。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 1 です。
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