公務員試験 H30年 国家一般職(行政) No.58解説

 問 題     

コミュニティや社会関係に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.柳田国男は,『日本農村社会学原理』において,行政区画として設定された行政村とは異なる自然発生的な村落を自然村と呼んだ。彼は,自然村は集団や社会関係の累積体であり,法よりも「村の精神」に支配されるため,社会的統一性や自律性を欠く傾向があるとした。

2.福武直は,「家」によって構成される村落において,本家である地主と分家である小作が水平的に結び付いた村落を同族型村落と呼び,村組や講に基づいて家が垂直的に結び付いた村落を講組型村落と呼んだ。彼は,前者は西南日本に多く,後者は東北日本に多く見られるとした。

3.中根千枝は,社会集団の構成要因として,「資格」と「場」を挙げ,日本の社会集団は「場」よりも「資格」を重要視するとした。彼女は,日本社会は,同じ「資格」を持つ人々で構成する「タテ社会」から,異なる「資格」を持つ人々で構成する「ヨコ社会」へ移行しつつあるとした。

4.R.M.マッキーヴァーは,アソシエーションとは,特定の関心に基づいて形成されるコミュニティを生み出す母体であるとした。そして,彼は,コミュニティは常にアソシエーションよりも部分的であり,アソシエーションは常にコミュニティよりも包括的かつ全体的であると考えた。

5.R.パットナムは,『哲学する民主主義』において,社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)を,「調整された諸活動を活発にすることによって社会の効率性を改善できる,信頼,規範,ネットワークといった社会組織の特徴」と定義した。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

選択肢 1 ですが
「日本農村社会学原理」の著者は鈴木栄太郎です。題名が似ている柳田国男の著書の1つとして「日本農民史」があります。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
福武直(ふくたけただし)によれば、同族的結合の強い東北を「東北型農村」、同等の家族によって構成される農村を「講組結合」とし、西南型農村と規定しました。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
中根千枝は社会人類学者です。「場」を強調し「ウチ」「ソト」を強く意識する日本的社会構造を指摘しました。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
アソシエーションとコミュニティについては、マッキーバーの定義が代表的です。マッキーバーによれば、アソシエーションが「一定目的達成のための社会組織」です。コミュニティが「一定地域で展開される自主的共同生活」です。そして、アソシエーションはコミュニティの部分であり、コミュニティは、アソシエーションを包括していると述べています。選択肢 4 は誤りです。参考 法務専門職 H28 no53

選択肢 5 は妥当です。
参考 H29no2

以上より、正解は 5 です。

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