公務員試験 H28年 国家一般職(行政) No.57解説

 問 題     

社会システムに関する理論についての次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.社会進化論の立場から社会有機体説を唱え,19 世紀の米国で活躍したH.スペンサーは,「単純社会から複合社会へ」,「産業型社会から軍事型社会へ」というように社会変動を捉え,世界大戦の発生を予見した。

2.É.デュルケムは,『自殺論』を著した後,『社会分業論』を発表し,社会進化の過程を通じて社会分業が発生すると主張した。そして彼は,社会的連帯が,社会分業の発生によって,選択意志によるものから本質意志によるものへと変化していくことになるとした。

3.構造=機能主義を代表する社会学者T.パーソンズは,システムが均衡し存続するために充足しなければならない要件として,A(適応),G(目標達成),I(統合),L(潜在的パターンの維持)の四つを挙げ,システムを分析するための概念用具としてAGIL 図式を示した。

4.R.K.マートンは,社会の存続に対して望ましい結果をもたらす機能を顕在的機能に,逆に社会の存続に対して望ましくない結果をもたらす機能を潜在的機能に区別した。その上で彼は,機能主義の問題点を指摘し,構造=機能主義を否定した。

5.N.ルーマンは,複雑性の増大を基本概念とした社会システム論を考え,システムは環境よりも常に複雑でなければならないとした。また彼は,法の構造化によって複雑性が増大するが,そのことで人々の選択が制限され,社会秩序が実現すると主張した。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが
スペンサー「軍事型社会」から「産業型社会」への進化を説きました。逆の記述になっています。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
デュルケムは、社会分業論において、相互に類似した同質的な成員が結合した「機械的連帯」の社会から,独立した人格を持った異質の成員が自らの個性を能動的に生かしながら,分業に基づいて相互に結びつく「有機的連帯」へと移行するという社会変動を想定した。意志を「本質意志」と「選択意志」の 2 類型に分けたのは、テンニースです。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当です。
パーソンズAGIL 図式についての記述です。

選択肢 4 ですが
マートンは、社会を分析する際の「機能」という言葉について、分類しました。結果が知られているか、そうでないかに基づいた分類が「顕在的機能、潜在的機能」です。結果が望ましいかそうでないかに基づいた分類は「順機能、逆機能」です。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
ルーマンは社会を、コミュニケーションの複雑性を「縮減」させながら作動する「システム」として定義しました。複雑性の「増大」を基本概念としたわけではありません。また、システムは複雑性を「減らす」ものです。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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