公務員試験 H28年 国家一般職(行政) No.58解説

 問 題     

階級・階層に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.K.マルクスは,社会の歴史を階級闘争によって説明した。資本主義が発達し,生産力が増すことで,生産手段の所有に関係なく,社会は豊かな貴族階級と貧しいプロレタリア階級とに分断され,両者の対立は革命を引き起こすとした。

2.G.ジンメルは,階級を同一の階級状況にある人々の集団として定義した。彼は,階級を,財産の違いで決まる財産階級,市場状況で決まる営利階級,社会移動の可能性で決まる社会階級の三つに分類し,その中で社会階級が特に重要であると主張した。

3.社会移動とは,個人が異なる社会階層に移動することをいう。社会移動には,子どもが親と異なる社会階層に移動する垂直移動と,個人が生涯のうちに異なる社会階層に移動する水平移動とがある。これらの移動は,産業構造の変動に起因する純粋移動の影響を受けて増減する。

4.旧中間層とは,資本主義社会において,資本家と賃金労働者のいずれにも属さず,小所有・小経営として存在する,自営農民層などを指す。一方,新中間層とは,企業や官庁などで働く賃金労働者で、事務・サービスなどの業務に従事し,その給与で生計を立てている従業員層を指す。

5.文化資本は,家庭環境や学校教育を通じて個人に蓄積される文化的な資本である。文化資本は,経済資本とは異なり,階級の再生産には寄与しないが,衣服などのように身体化されたり,書物などのように客体化されたり,資格などのように制度化されたりする。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

選択肢 1 ですが
マルクスの階級論では、
生産手段の所有・非所有に基づき二大階級(資本家と労働者)が表れるとしました。「生産手段の所有に関係なく」ではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
財産階級、営利階級といった分類を行ったのは、M.ウェーバーです。ウェーバーは、一元的指標に基づいた階級区分に代えて、複合的指標による多元的階級区分を提唱しました。具体的には、階級と身分という2つの軸による区分です。そして、階級を、1:財産の相違による区分(財産階級),2:市場利用の機会による区分(営利階級)と区分しました。ちなみにジンメルは、「社会的分化」を唱えました。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
垂直移動
とは、異なる社会階層に移動することです。「子どもが親と異なる階層に移動」ではありません。また、水平移動とは、社会のなかで同一水準にある社会的位置間の移行を意味し,そこに上下の関係が見られない移動のことです。「個人が生涯のうちに異なる社会階層に移動すること」ではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当です。
旧中間層及び新中間層についての記述です。

選択肢 5 ですが
文化資本
を提唱したのはブルデューです。文化資本とは、金銭によるもの以外の、学歴や文化的素養といった個人的資産のことです。家庭で身に付けた階級文化が,学校での成功のチャンスを左右し,学校が文化を通じた階級の再生産に寄与する「文化的再生産」により、階級再生産に寄与すると考えられています。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 4 です。
類題 法務 H26no56

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