公務員試験 2019年 国家一般職(行政) No.58解説

 問 題     

R.K.マートンの理論に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.予期的社会化(期待的社会化)とは,将来所属したいと思っている集団の価値や態度を所属する以前に学習することであり,それによって実際に集団に属する可能性が高まったり,所属後の集団への適応がスムーズになったりするとした。

2.中範囲の理論とは,社会現象を分析するために自分自身の価値観と社会一般の価値観との共通点と相違点を反省的に自覚し,両者の適切なバランスを維持しながら価値中立的な立場を目指す理論のことである。

3.社会システムへの適応や調整を促進する作用を顕在的機能と呼び,ホピ族の雨乞いの儀式が干ばつという危機的な事態の中で集団の連帯を強化するというプラスの効果を持つことからその機能を顕在的機能とした。

4.逸脱者は社会が「逸脱者」というラベルを貼ることによって逸脱者となる,というラベリング理論を提唱し,それに対する個人の適応様式を犯罪,葛藤,自殺,無気力,反抗の五つに分類した。

5.AGIL 図式を提唱し,システムが維持されるためにはA(適応),G(目標達成),I(統合),L(潜在的パターンの維持及び緊張の処理)という四つの機能要件を満たす必要があり,それぞれを全体システムの下位に位置するサブ・システムが担うとした。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

選択肢 1 は妥当です。
予期的社会化についての記述です。

選択肢 2 ですが
マートンは、社会学の理論について、全体包括的な一般理論は時期尚早とし、特定の限られた範囲に適応できる特殊理論を開発することが先決だと主張しました。これを中範囲の理論といいます。「社会現象を分析するために自分自身の価値観と社会一般の価値観との共通点と相違点を反省的に自覚し・・・」という内容ではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
マートンは、社会を分析する際の「機能」という言葉について、分類しました。結果が知られているか、そうでないかに基づいた分類が「顕在的機能、潜在的機能」です。結果が望ましいかそうでないかに基づいた分類は「順機能、逆機能」です。(H28no57)。記述は「集団の連帯を強化するというプラスの効果を持つこと」に注目しており、順機能についてと考えられます。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
社会が「逸脱者」というラベルを貼ることによって逸脱者となる,というラベリング理論を提唱したのはベッカーです。(H28no59)。マートンではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
AGIL 図式を提唱したのは、T.パーソンズ です。(H30no59)。マートンではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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