国家公務員総合職(化学・生物・薬学)H29年 問21解説

 問 題     

化学ポテンシャルに関する次の記述の ㋐、㋑、㋒ に当てはまるものの組合せとして最も妥当なのはどれか。

「図は、ある純物質のある平衡相における、温度と化学ポテンシャルの関係をおおまかに表したものである。化学ポテンシャルは、圧力の影響を受ける。図中の実線が、ある圧力における気相の化学ポテンシャルであるとすると、圧力を上げたときの化学ポテンシャルは、図中の破線 ㋐で表される。

固相のモル体積 Vm(固)と液相のモル体積 Vm(液)の関係が Vm(固) ㋑ Vm(液)となる純物質の場合、圧力を上げると、その凝固点は降下する。揮発性の溶媒(純溶媒)に不揮発性溶質を溶かした場合も溶媒の化学ポテンシャルは変化する。

図中の実線が、溶質を溶かす前の溶媒の化学ポテンシャルであるとすると、不揮発性溶質を溶かしたときの溶媒の化学ポテンシャルは、図中の破線 ㋒ で表される。」

 ㋐ ㋑ ㋒
1. a  >  a
2. a  >  b
3. a  <  b
4. b  >  a
5. b  <  a

 

 

 

 

 

正解.2

 解 説     

化学ポテンシャルは、温度一定の場合、圧力が高くなるほど高くなります。圧力一定の場合、温度が高くなるほど、低くなります。従って、㋐ は a です。正解は 1 ~ 3 です。

㋑ ですが
圧力を上げると凝固点が降下する例は、水です。スケートリンクで圧がかかると、氷がその時だけ溶けるので滑るという話を聞いたことがあるのではないでしょうか。そして、水は物質の中では珍しく、固体の方が液体よりも体積が大きいことが知られています。ペットボトルの水を凍らせて破裂させたことがあるのではないでしょうか。従って、「Vm(固)> Vm(液)」となる純物質の場合、圧力を上げると凝固点が降下する と判断できます。これにより、正解は 1 or 2 です。

㋒ ですが
不揮発性溶質を溶かすと、その物質により揮発が妨げられます。溶媒が蒸発しようとするのを妨げられるため「蒸気圧降下」です。圧力が下がるため、化学ポテンシャルは下がります。従って、㋒ は b です。

以上より、正解は 2 です。

コメント