国家公務員総合職(化学・生物・薬学)H28年 問8解説

 問 題     

遺伝子の本体に関する記述 ㋐ 〜 ㋓ のうち妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

㋐ ハーシーとチェイスは、タンパク質と DNA のどちらが遺伝子の本体であるかを確認するために、ファージの増殖に伴うファージタンパク質と DNA の動態を調べた。タンパク質と DNA の標識にはそれぞれ 14C と 15N の放射性同位元素が用いられた。

㋑ DNA は、リン酸と糖と塩基からなるヌクレオチドが多数つながってできている。いずれの生物においても、DNA 中には、アデニンとチミン、グアニンとシトシンがそれぞれ同じ数含まれており、これをシャルガフの法則と呼ぶ。

㋒ 形質転換とは、熱や放射線等の外部刺激によりDNA に変異が生じることをいう。その現象はグリフィスの非病原性肺炎双球菌の病原性獲得実験により発見され、その後、アベリーらによりDNA の変異部位が同定された。

㋓ 一つの生物体を構成する体細胞の核 1 個に含まれる DNA 量は、細胞の種類によらずほぼ一定であるが、生物の種類により大きく異なる。複雑な構造をもつ生物ほど細胞に含まれる DNA 量は多くなり、真核生物の中ではヒト細胞の DNA 量が一番多い。

1.㋐、㋑
2.㋐、㋒
3.㋑
4.㋑、㋓
5.㋓

 

 

 

 

 

正解.3

 解 説     

㋐ ですが
標識として用いられたのは 32P、35S です。DNA のみに P が、タンパク質のみに S が含まれることに注目した標識です。14C と 15N ではありません。よって、㋐ は誤りです。

㋑ は妥当な記述です。

㋒ ですが
形質転換とは、細胞外部からDNA を導入し、その遺伝的性質を変えること、及びその操作のことです。外部刺激による DNA 変異は「突然変異」です。また、アベリーによって示されたのは「形質転換を引き起こす物質が DNA である」ということです。よって、㋒ は誤りです。

㋓ ですが
魚や高等植物には、ヒトよりも細胞に含まれる DNA 量が多いものもあります。よって、㋓ は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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