国家公務員総合職(化学・生物・薬学)H26年 問28解説

 問 題     

ヘキサアクアマンガン(Ⅱ)錯体に関する次の記述の ㋐ ~ ㋓に当てはまるものの組合せとして最も妥当なのはどれか。

「ヘキサアクアマンガン(Ⅱ)錯体において Mn2+ の 3d 軌道は結晶場により分裂している。基底状態において、電子配置はフントの規則が示すとおり、㋐ のようになる。したがって 3d 軌道内で電子が励起される際には ㋑ が変化するが、この励起過程は ㋒ であるため、ヘキサアクアマンガン(Ⅱ)錯体は、他の 3d 遷移金属(Ⅱ)のヘキサアクア錯体に比べて、㋓ 着色を示す。」

 

 

 

 

 

正解.5

 解 説     

フントの規則とは「同じエネルギーの軌道が複数あるときは、電子は同じスピンのものがなるべく多くなるように複数の軌道に分かれて入る」という規則です。結晶場分裂が起きているとはいえ、エネルギー差が小さいこともふまえ、5つの軌道に同じスピンの電子が入っている図Ⅱが妥当と考えられます。㋐ は図Ⅱです。

㋑ ~ ㋓ ですが
電子の励起が 3d 軌道内でおきると、スピン多重度が変化するとわかります。(同じ向きの電子数が変わる、ということです。)d – d 軌道遷移は、ラポルテの規則より禁制遷移です。理論上は起きづらく、そのため吸光は弱い観測を示します。

以上より、正解は 5 です。

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