薬剤師国家試験 第101回 問70 過去問解説

 問 題     

重症肝硬変がもたらす薬物動態学的影響として、正しいのはどれか。1 つ選べ。

  1. 肝細胞への酸素供給の増加
  2. 肝細胞への薬物取り込みの増加
  3. 酸性薬物の血漿中非結合形分率の増大
  4. 肝血流量の増加
  5. CYP 2C19 の活性亢進

 

 

 

 

 

正解.3

 解 説     

肝硬変とは、肝細胞の、進行した繊維化です。その結果血流量低下、肝機能低下が生じます。

選択肢 1,2,4 ですが
肝硬変により、血流量は低下します。酸素を運ぶのは、血液なので肝細胞への酸素供給は低下します。また、薬物は血流に乗って運ばれるため肝細胞への薬物取り込みは低下します。よって、選択肢 1,2,4 は誤りです。

選択肢 3 は、正しい選択肢です。
肝機能低下 → 肝臓で産生されるアルブミンの量が減少 → 血中タンパク結合率低下 → 非結合率は増加 と考えられます。

ちなみに「酸性薬物」という表現の理由について以下、補足します。もしもこの選択肢が「薬物」とすると、塩基性薬物(例:三環系抗うつ薬、キニジン、プロプラノロールなど)を含みます。

塩基性薬物だと、アルブミンではなくグロブリンの一種であるα1 酸性糖タンパク質が、メインの結合タンパク質です。そして、α1 酸性糖タンパク質は一種の炎症反応性タンパク質なので、肝硬変だから産生量が減少する、と一概には言い切れません。以上を考慮して「酸性薬物」という表現を用いていると思われます。補足 終わり。

最後に、選択肢 5 ですが
肝機能低下 → 肝臓で産生される CYP 産生量低下 → 活性は低下です。活性亢進では、ありません。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。
類題 99-288289
参考 病態・薬物治療学まとめ 肝炎、肝硬変の病態生理、治療薬、注意点

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