薬剤師国家試験 第99回 問67 過去問解説

 問 題     

正規分布が仮定できる数値データについて、2群間の平均値の差の検定に用いる統計手法はどれか。1つ選べ。

  1. 符号検定
  2. カイ二乗検定
  3. Studentのt検定
  4. Fisherの直接確率法
  5. Wilcoxonの順位和検定

 

 

 

 

 

正解.3

 解 説     

選択肢 1 ですが
符号検定とは、2群のデータの差を+か-かだけ(符号のみ)注目する検定です。例えば、試験1週間前と、試験後に同じ問題を解いた時の点数(1問10点満点)が以下のようになったとします。

問題番号  1  2  3 ・・・
試験 1w 前 5 6 4 ・・・
試験後  8 10 1 ・・・
     (+) (+) (-)

この時、試験後の方が点数が上がっていたら「+」、試験後の方が点数が下がっていたら「-」とします。もしも、2群に差がないとすれば、+と-は偶然で左右され、それぞれの確率は大体 1/2 ずつで出るはずです。異常に偏っていたら、2群に差があると考える検定です。平均値の差を考える時には用いられません。(そもそもこの検定を用いるのであれば平均値をデータから出しません。)よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
カイ二乗検定は、データの分布が理論とほぼ同じかどうかを検定する時に用います。例えばですが、男子1000人、女子1000人から無作為に100人選んだら男子 35人、女子 65人だった。これって、何か偏ってない?といった問題に用います。平均値の差の検定には用いられません。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は正しいです。
スチューデントの t 検定は、統計量に対する検定に用いられます。統計量とは、データの特徴を表す数値です。特に分布の中心を表す 平均値、中央値、最頻値や、分布のばらつきを表す 分散や標準偏差 などを基本統計量といいます。t 検定は、2つの母集団に対して、平均が等しいかどうかを検定する時などに用いられます。

選択肢 4 ですが
Fisher の直接確率法とは、2つのカテゴリーに分類されたデータの分析に用いられる方法です。直接、確率を計算する方法です。平均値の差の検定には、用いられません。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
Wilcoxon の順位和検定とは、符号検定と同様に2群のデータに差があるかどうかを検定する時に用いる検定法です。符号検定との違いは、2群のデータに対して+、- で考えるのではなく、それぞれ順位をつけ、順位の和を考えるという点です。平均値の差を考える時には用いられません。(そもそもこの検定を用いるのであれば平均値をデータから出しません。)よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。
類題 106-193
参考 薬学基礎 数学・統計学まとめ 基本統計量

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