薬剤師国家試験 第97回 問198-199 過去問解説

 問 題     

10歳男児。体重30㎏。A群溶連菌咽頭炎の診断を受けた。軽度の腎機能障害あり。ペニシリンアレルギーがあることから、エリスロマイシンラクトビオン酸塩注射液が処方された。

問198

医師への情報提供の内容として、不適切なのはどれか。1つ選べ。

  1. 副作用としてQT延長が現れることがある。
  2. 初回投与時は、ショックやアナフィラキシー様症状に注意する。
  3. 腎機能に基づいて投与量を設定する。
  4. 2時間以上かけて点滴静注で投与する。
  5. 静脈内投与する場合でも胃腸障害に注意する。

問199

エリスロマイシンラクトビオン酸塩注射液の調製に際して、バイアル中の粉末を生理食塩液ではなく、注射用水で溶解させてから使用することになっている。その理由として、正しいのはどれか。1つ選べ。

  1. 食塩存在下では、エリスロマイシンの分解が促進され、力価が低下する。
  2. 生理食塩液では塩析が起こるので、エリスロマイシンを溶解させることができない。
  3. 生理食塩液は緩衝作用が弱いので、調製液のpHが大きく変動する。
  4. Naがエリスロマイシンの溶解補助剤と配位結合し、不溶の複合体を形成する。
  5. Clがエリスロマイシンと反応し、力価を低下させる。

 

 

 

 

 

正解.
問198:3
問199:2

 解 説     

問198

エリスロマイシンは、マクロライド系の抗生物質です。リボソームの 50S サブユニットに結合することで細菌のタンパク合成を阻害することによって、静菌的に働きます。

エリスロマイシンは、副作用としての消化器症状に注意が必要です。ごくまれにですが、ショックやアナフィラキシー様症状、QT 延長といった重篤な副作用がおきることがあります。

静脈注射する時は、血管痛が強く、1時間以上かけてゆっくりと点滴することが推奨されます。

CYP3A4 で代謝されるため、肝代謝であり、相互作用に注意が必要です。

以上より、腎機能に基いて投与量を設定する必要はありません。正解は 3 です。

問199

エリスロマイシン注射液は、注射用水で 5% 溶液をつくり、これにブドウ糖注射液や生理食塩液等で希釈します。生理食塩液の成分である Na+ や Cl とエリスロマイシンや、溶解補助剤と反応するわけではありません。よって、選択肢 1,4,5 は誤りです。

又、3 の前半はその通りですが、注射用水も緩衝作用が強いわけではないので、調製液の pH の変動が理由ではないと考えられます。よって、選択肢 3 は誤りです。

以上より、正解は選択肢 2 です。

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