薬剤師国家試験 第107回 問152 過去問解説

 問 題     

薬物依存及びその治療薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 身体依存は、薬物の反復使用により、その効果が減弱し目的の効果を得るために増量しなければならなくなった状態である。
  2. コカインの長期連用は、精神依存を起こすが、身体依存を起こしにくい。
  3. 慢性疼痛下のがん患者に適正に使用されたモルヒネは、精神依存を起こしにくい。
  4. 依存性薬物は、脳内報酬系におけるドパミン作動性神経を抑制する。
  5. ジスルフィラムは、グルタミン酸 NMDA 受容体を遮断して飲酒欲求を抑制する。

 

 

 

 

 

正解.2, 3

 解 説     

選択肢 1 ですが
記述は「耐性」についてです。

選択肢 2,3 は妥当です。
身体的依存を相対的に起こしやすいのが、オピオイド、バルビツレート、アルコールです。

選択肢 4 ですが
依存性薬物は、脳内報酬系におけるドパミン作動性神経を興奮させます。「抑制」ではありません。選択肢 4 は誤りです。(98-152 選択肢 4)。

選択肢 5 ですが
ジスルフィラムは、アルコール代謝に必要なアルデヒド脱水素酵素のはたらきを阻害することで、アルコール摂取に伴う副作用を大きくする嫌酒薬です。「グルタミン酸 NMDA 受容体を遮断」ではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2,3 です。

参考 薬理学まとめ 薬物依存性について

雑感(国試対策には不要です。)
ちなみに
ジスルフィラムは、マクロファージの動きと活性化を制御する細胞内タンパク質 FROUNT (フロント) のはたらきを阻害する作用が発見され、抗がん剤や抗不安剤としての効果が期待されています。https://www.tus.ac.jp/today/archive/20220414_3208.html

ドラッグリポジショニングの一例といえますが
低分子でもあり、医療経済的に見ても 安価な良い治療薬として期待できると感じました。

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