薬剤師国家試験 第107回 問96 過去問解説

 問 題     

分配係数は、薬物の脂溶性の指標として用いられる。ある 1 価の弱酸 HA (pKa 5.3) が pH 5.0 の緩衝液中に溶解している。この緩衝液 200 mLに水と混ざり合わない有機溶媒 100 mLを加えて HA を 1 回抽出したところ、抽出率は 75 %であった。

この弱酸 HA の分配係数 KD (有機溶媒中の分子形の濃度/緩衝液中の分子形の濃度) に最も近い値はどれか。1 つ選べ。

ただし、温度は一定で、混合により有機溶媒と緩衝液の体積に変化はなく、イオン形 (解離形) は有機層に移行しないものとする。また、100.3= 2 とする。

  1. 4.0
  2. 5.0
  3. 6.0
  4. 7.0
  5. 9.0

 

 

 

 

 

正解.5

 解 説     

pH,pKa が与えられている弱酸なので、Henderson – Hasselbalch(ヘンダーソン ハッセルバルヒ)の式 を思い出します。『pH = pKa + log (イオン形/分子形)  ※酸性化合物の場合』です。(分析化学 pHによる分子形、イオン形の変化)。 

pH = 5.0、pKa = 5.3 を代入することで
イオン形と分子形の比率が1:2とわかります。計算過程は以下のようになります。

選択肢 1 が正解と仮定すると
抽出率は 3.2/4.6 × 100 です。75% には少し足りません。
抽出率の計算過程は、以下のようになります。

足りなかったので、一番抽出率が大きくなる選択肢 5 を正解と仮定します。同様に計算すれば、1回抽出後の有機溶媒中 分子形の濃度が 1.8 × 2 = 3.6 です。抽出率が 3.6/(3.6+1.2) × 100 = 75% となります。

以上より、正解は 5 です。

コメント