問 題
68歳男性。30歳時に結核、52歳時に脂質異常症を指摘され、ロスバスタチンを内服中である。2年前に急性心筋梗塞を発症し、その際に出現した心室頻拍と心室細動に対してアミオダロンによる治療が開始され、その後症状は安定していた。
本日、呼吸困難のため緊急入院となった。3ヶ月前から食欲がなく、息切れを自覚していた。入院時に発熱はなく、主な検査値は以下のとおりで、白血球数が増加、CRP、LDHが高値を示していた。
(検査値)
血圧 102/65mmHg、心拍数 100拍/分、SpO2 93%、Hb 12.7g/dL、白血球数 10,600/μL、AST 26IU/L、ALT 21IU/L、LDH 184IU/L、eGFR 56.3mL/min/1.73m2、CRP 14.3mg/dL、QTF(クォンティフェロン) 陰性、モニター心電図で異常所見なし
問290
この患者の病態として、可能性が高いのはどれか。2つ選べ。
- 胸部聴診所見で、水泡音が聴取される。
- 血液検査で、シアル化糖鎖抗原KL-6の値が高値を示す。
- 動脈血液ガス検査で、高炭酸ガス血症を伴う。
- CTにて、両側肺に広範囲のすりガラス陰影を認める。
- 肺機能検査で、%VCは変化せず、FEV1.0%が低下している。
問291
この患者への対応として、適切なのはどれか。2つ選べ。
- アミオダロンを中止する。
- ステロイドパルス療法を実施する。
- ステロイド吸入療法を実施する。
- 人工呼吸器を装着する。
- リファンピシンを投与する。
正解.
問290:2, 4
問291:1, 2
解 説
問290
アミオダロンの副作用として、間質性肺炎があることは基礎知識です。(薬理学まとめ 2-4 1))。SpO2 が低値→ 全身に酸素が行き渡ってない、肺?心臓?、CRP 高い→炎症? といった点をふまえ、間質性肺炎を連想する事が期待されていると考えられます。
選択肢 1 ですが
間質性肺炎では、息を吐く際に背中から聴取すると、捻髪音(チリチリ、パチパチ)が多く観察されます。「水泡音」ではありません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は妥当です。
KL-6 は、間質性肺炎等で上昇します。(104-290)。
選択肢 3 ですが
高炭酸ガス血症では、頭痛、振戦、痙攣、傾眠、発汗などが見られます。間質性肺炎が重症化すると、高炭酸ガス血症が発症することもあるのですが、高炭酸ガス血症を示唆する事項は見られません。選択肢 3 は誤りと考えられます。
選択肢 4 は妥当です。
参考 103-202
選択肢 5 ですが
間質性肺炎では、肺活量(VC) が落ちます。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 2,4 です。
問291
間質性肺炎の原因と考えられるアミオダロン中止と、間質性肺炎への対処が必要と考えられます。対処としては、ステロイドや免疫抑制剤を用います。全身効果を期待しており、ステロイド吸入は不適切です。選択肢 1,2 が妥当です。
以上より、正解は 1,2 です。
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