薬剤師国家試験 第105回 問212-213 過去問解説

 問 題     

35歳女性。肺動脈性肺高血圧症のためにイロプロスト吸入液を使用していた。しかし、仕事で出張が多くネブライザーを持ち歩いての使用に不都合があるため、下記の薬剤へ変更となった。

問212

薬剤師が行う患者への説明として、適切なのはどれか。2つ選べ。

  1. 副作用として頭痛が起こることがあります。
  2. 血液を固まりやすくする作用があります。
  3. 噛まずに服用してください。
  4. 妊娠していても服用可能です。

問213

イロプロストやベラプロストナトリウムはプロスタグランジンI2の構造をもとに開発された薬物である。これらに関する記述のうち、最も適切なのはどれか。2つ選べ。

  1. イロプロストはプロスタグランジンI2の部分構造aの酸素原子を炭素原子に置換することにより、シトクロムP450による代謝を受けやすくしている。
  2. ベラプロストナトリウムはプロスタグランジンI2のプロドラッグである。
  3. ベラプロストナトリウムはカルボン酸部位を塩とすることにより、水溶性を向上させている。
  4. プロスタグランジンI2の部分構造aの二重結合の立体化学はE配置である。
  5. ベラプロストナトリウムはプロスタグランジンI2の部分構造aに芳香環を導入することにより、酸性条件下での安定性を向上させている。

 

 

 

 

 

正解.
問212:1, 3
問213:3, 5

 解 説     

問212

選択肢 1 は妥当な記述です。
頻度は少ないのですが、血管拡張によるほてりや頭痛の副作用がまれに起きることが知られています。

選択肢 2 ですが
ベラプロストは、プロスタサイクリン受容体を刺激し、アデニル酸シクラーゼを活性化することで細胞内 cAMP 濃度上昇をもたらし、血管拡張作用、血小板凝集抑制作用などを示す薬です。血を「固まりやすく」する作用ではありません。よって、選択肢 2 は誤りです。(97-158)

選択肢 3 は妥当な記述です。
徐放錠なので、噛んだりすると徐放性が失われます。

選択肢 4 ですが
妊婦や妊娠可能性がある人には投与禁忌です。よって、選択肢 4 は誤りです。

以上より、正解は 1,3 です。

問213

選択肢 1 ですが
フラン環が飽和炭素五員環になったからといって、CYP の代謝を受けやすくはならないだろうと感じるのではないでしょうか。選択肢 1 は誤りと考えられます。

選択肢 2 ですが
構造を比較すると、余計なメチル基がついていたりするので、「代謝されてプロスタグランジンI2 になる」化合物ではないと判断できるのではないでしょうか。選択肢 2 は誤りと考えられます。

選択肢 3 は妥当な記述です。
カルボン酸→塩 で水溶性向上というのは納得できる構造変換と考えられます。

選択肢 4 ですが
二重結合に対し、優先度が高い方が「同じ側」とわかります。つまり「Z」配置です。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当な記述です。

以上より、正解は 3,5 です。

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