薬剤師国家試験 第105回 問210-211 過去問解説

 問 題     

73歳男性。高血圧と糖尿病のため以下の薬剤が処方されていた。

薬剤師が患者宅を訪問した際、この患者に末梢神経障害などがみられ、薬剤をPTPシートから取り出すことに不自由していた。そのため、薬剤師は、一包化することを医師に提案することにした。

患者が服用しているオルメサルタンメドキソミル錠の添付文書を確認したところ、下記のような記載があった。

【取扱い上の注意】
本剤をメトホルミン塩酸塩製剤と一包化し高温多湿条件下にて保存した場合、メトホルミン塩酸塩製剤が変色することがあるので、一包化は避けること。

問210

オルメサルタンメドキソミル錠に含まれる有効成分Ⅰはプロドラッグであり、生体内において図に示すような活性体ⅡとⅢを生じる。一方、高温多湿条件下でもⅠの加水分解反応によってⅢが生成し、これとメトホルミンとの反応によって変色が起こるものと推定されている。

以下の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. ⅠはⅡの疎水性を高めることにより、経口吸収性を改善したプロドラッグである。
  2. Ⅱのテトラゾリル基はヒドロキシ基の生物学的等価体である。
  3. Ⅰの炭酸エステル部位の酸化反応により、ⅢとCO2を生じる。
  4. メトホルミンは高い求電子性をもつ。
  5. メトホルミンとⅢとの反応は縮合反応である。

問211

この処方を調剤する場合に、薬剤師の対応として適切でないのはどれか。1つ選べ。なお、それぞれのケースにおいて患者の了承はあるものとする。

  1. オルメサルタンメドキソミル錠とそれ以外の薬剤を別々に分包する。
  2. 医薬品インタビューフォームなどを参考にし、変色が起きないと考えられる日数で分割調剤する。
  3. 乾燥剤を入れた缶に保存するなど、変色が進まない保管方法を患者に指導する。
  4. メトホルミン塩酸塩錠を他のビグアナイド系薬剤に変更可能か医師と協議する。
  5. オルメサルタンメドキソミル錠を他の降圧剤に変更可能か医師と協議する。

 

 

 

 

 

正解.
問210:1, 5
問211:4

 解 説     

問210

選択肢 1 は妥当な記述です。
Ⅱのカルボン酸部分が、Ⅰではエステルになっています。カルボン酸→エステルで、疎水性向上させて、経口吸収性改善させるプロドラッグです。

選択肢 2 ですが
テトラゾリル基は「カルボキシ基」の生物学的等価体です。ヒドロキシ基ではありません。よって、選択肢 2 は誤りです。(100-106)

選択肢 3 ですが
「加水分解」と考えられます。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
窒素原子上の孤立電子対が多く、「求核性」と考えられます。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当な記述です。

以上より、正解は 1,5 です。

問211

選択肢 1 は妥当な記述です。
二包でも、服用は容易になると考えられます。

選択肢 2,3 は妥当な記述です。
変色を避けた上での一包化の実施です。

選択肢 4 ですが
他のビグアナイド系でも、結局Ⅲと反応して変色してしまっては意味がありません。

選択肢 5 は妥当な記述です。
他の降圧剤へ変更することで、Ⅲが生成されなければ、一包化が可能になると考えられます。

以上より、正解は 4 です。

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