薬剤師国家試験 第105回 問94 過去問解説

 問 題     

ボルツマン分布は、異なるエネルギー準位E1、E2(E1 < E2)をもつ分子の数をそれぞれN1、N2としたときの、熱平衡状態における両者の比(N2/N1)に関する情報を与える(下式参照)。ボルツマン分布に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 式中の( A )に入る物理量は体積である。
  2. 常にN2/N1 < 1が成り立つ。
  3. E1とE2の差が大きいほどN2/N1が小さくなる。
  4. 温度が高いほどN2/N1が小さくなる。
  5. N2/N1=1/eとなるときの(E2-E1)を活性化エネルギーという。

 

 

 

 

 

正解.2, 3

 解 説     

選択肢 1,4 ですが
A に入るのは T (絶対温度)です。体積ではありません。よって、選択肢 1 は誤りです。

また、これにより「T が大きくなる」ほど、「ex における指数部分が小さくなる」とわかります。つまり、T が大きいほど N2/N1 は「大きく」なります。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 2,3 は妥当な記述です。
E1 < E2 より、E2 ー E1 は0よりも大きい数です。ボルツマン定数 kB、絶対温度も正なので、右辺は「ex における指数部分が 0 より小さい式」です。従って、N2/N1 は e0 ~e-∞ の間なので、0 ~ 1 の間をとります。さらに、E1 と E2 の差が大きいと、E2 ー E1 は 大きくなります。すると、より指数部分が -∞ に近づきます。すると、左辺の値は 0 に近づくため「小さく」なります。

選択肢 5 ですが
活性化エネルギーがわかるのはアレニウスの式です。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2,3 です。

参考)物理化学まとめ エネルギーの量子化とボルツマン分布

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