公務員試験 H30年 国家一般職(行政) No.48解説

 問 題     

技術経営に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.我が国の大手自動車会社の生産方式の主要な構成要素であるカンバン方式は,基本生産計画に基づき部品展開して所要量を計算した後,中央集権的に作った生産工程を全工程に一斉に伝達・指示する押し出し方式を採用しており,無駄な在庫が生まれにくい仕組みとなっている。

2.リード・タイムの短縮化を実現する製品開発手法の一つに,各機能部門が業務を同時並行させて製品開発を行うシーケンシャル・エンジニアリングがある。これに対して,製品開発に関わる各部門が,個別に業務を完了させてから次の部門に引き継ぐ方式はコンカレント・エンジニアリングと呼ばれ,起こり得る問題を早期に発見し解決するフロント・ローディングが実現される。

3.R.H.ヘイズらが示した製品・工程マトリックスによると,製品標準化が進むと,品種数を減らしてロットサイズを大きくできるので,製品のタイプとしては少量生産よりも大量生産の方が適合的になる。また,同時にフレキシビリティへの要求は弱まるので,工程のタイプとしては,ラインフローや連続フローなどの流れ生産よりもプロジェクトやジョブショップが適合的になる。

4.利益を管理するためのCVP 分析において,変動費が売上高に等しくなるポイントは損益分岐点と呼ばれ,損益分岐点における売上高は「変動費÷限界利益率」によって求められる。したがって,損益分岐点における利益は,変動費は回収できているものの固定費の分だけマイナスとなっている。

5.伝統的なイノベーションの分類によると,連続的・累積的なイノベーションの積み重ねによるインクリメンタル・イノベーションや,新しい技術への挑戦といったリスクを伴うラディカル・イノベーションがある。この分類に対して,C.M.クリステンセンは,分断的イノベーションとは既存の技術的トラジェクトリを破断し,別の新たな技術進歩の軌道を作るものであるとした。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

選択肢 1 ですが
カンバン方式とは、連続工程間の仕掛在庫最小化の仕組みです。(H27no47)。所要量を計算した後、全行程に一斉に伝達・指示する押し出す方式ではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
各担当部門が緊密に連携しながら同時並行的に開発を行うのは、コンカレント・エンジニアリングと呼ばれる開発方法です。(H28no49)。シーケンシャルは「連続的な」という意味です。シーケンシャルエンジニアリングは、各ステップを順番にクリアしていく開発方法です。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
製品工程マトリックスとは、横軸に製品タイプ、縦軸に工程タイプをとった分析手法です。一般的な枠組みとして、製品タイプの枠組みが「一品生産品、一品種大量生産、多品種少量生産・・・」、工程タイプの枠組みが「プロジェクト、バッチフロー、製品別の連続生産ライン・・・」などです。(H28no49)。記述の後半部分について、フレキシビリティへの要求が弱まるのであれば、流れ生産が適合的になると考えられます。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
損益分岐点は、「固定費+変動費」と売上が等しくなる点です。また、損益分岐点における利益は 0 です。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当です。
イノベーションについての記述です。

以上より、正解は 5 です。

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