公務員試験 H30年 国家一般職(行政) No.47解説

 問 題     

組織の構造と動態に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.R.K.マートンは官僚制の逆機能について指摘した。これによれば,例えば,組織における行動に関する信頼性が強調されると,組織メンバーが規則を遵守することで行動を硬直化させ,顧客の個別ニーズに対応できなくなり,顧客とのトラブルが増加する。その結果,更に信頼性を強調する必要が出てきて,一層規則遵守が徹底されるようになる。

2.第二次世界大戦後の日本企業の経営慣行は日本的経営と呼ばれ,その特徴である終身雇用,年功賃金,産業別労働組合は「三種の神器」と呼ばれた。1960 年代までは,こうした特徴が我が国の経済成長の主要因であるとして海外から高く評価されたが,1970 年代に入ると,P.F.ドラッカーらによって,日本的経営は前近代的であると批判されるようになった。

3.企業間の戦略と業績の差異を生み出す要因について,企業に蓄積されたヒト,モノ,カネ,情報といった経営資源に注目して説明したものが資源依存理論である。この理論においては,資源が適切に活用されているかについて,価値,希少性,模倣困難性及び組織といった観点から,分析がなされる。

4.1940 年代までのリーダーシップの初期研究では,リーダーの行動と業績の関係に研究の重点が置かれていたが,1950 年代に入ると状況好意性とリーダーシップ・スタイルの関係が研究対象になり,R.リッカートは,人間関係志向のリーダーシップ・スタイルがどのような状況でも有効であるとするコンティンジェンシー理論を提唱した。

5.マトリックス組織は,機能ごとに全社共有の部門とするか,事業部内に配置するかを判断して組織編成が行われており,ライン・アンド・スタッフ組織とも呼ばれる。また,マトリックス組織は,個々の組織メンバーについて,命令系統一元化の原則に反して二人以上の上司が存在することになることから,連結ピン組織の一形態である。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

選択肢 1 は妥当です。
官僚制の逆機能についての記述です。

選択肢 2 ですが
ドラッカーは日本の経営を高く評価しました。「ドラッカーらによって・・・前近代的であると批判されるようになった」わけではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
資源依存理論は、組織間の資源取引関係に着目した経営環境分析手法の1つです。戦略と業績の差異を生み出す要因について資源に注目して説明した理論は、リソースベーストビューです。資源の価値や希少性といった観点から分析を行うのが VRIO フレームワークです。(H27no46)。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
「コンティンジェンシー理論」とは、いかなる状況でも高い成果を発揮する最善なリーダーシップは存在せず、外部環境の変化に応じて変化すべきだとする考え方です。コンティンジェンシー(contingency)は、偶然性、偶発性という意味です。(H29no49)。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
マトリックス組織とは、「機能別組織」と「期間プロジェクト組織」の組み合わさった組織形態のことです。(H27no48)。また、ライン・アンド・スタッフ組織は、一貫した命令系統であるライン組織と、ラインの職能を手助けするスタッフが付け加えられた組織形態です。マトリックス組織とは別ものです。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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