公務員試験 H29年 国家一般職(行政) No.49解説

 問 題     

組織行動に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.科学的管理法の提唱者であるF.W.テイラーは,20 世紀初頭当時の英米の工場で発生していた怠業を,その発生原因によって自然的怠業と組織的怠業に分類した。1960 年代に入ると人間関係論と呼ばれる一連の研究が始められ,自然的怠業や組織的怠業の発生メカニズムは,F.ハーズバーグのX理論・Y理論によって理論化された。

2.組織の環境適応のプロセスである組織学習について,C.アージリスらは,組織が持つ既存の価値観に基づいて,矛盾や誤りを修正するシングル・ループ学習と,組織が持つ既存の価値観そのものに疑問を提示するような変革を伴うダブル・ループ学習の二つの類型があるとし,創造的なアイデアの創出や環境変化に対して柔軟な組織にすることでは,ダブル・ループ学習の方が有効であると考えた。

3.人間の基本的欲求を欠乏欲求と成長欲求に分類する欲求段階説の考え方は,E.E.ローラーによる研究において,給与の重要性獲得メカニズムを明らかにする中で否定された。また,ローラーは,内的報酬となる感情や感覚をもたらし,満足感を与えてくれるのが,有能さと自己決定の感覚であるとする内発的な動機づけ理論を提唱した。

4.内発的な動機づけ要因の一つである達成動機は,1930 年代に盛んになった期待理論と呼ばれる内発的動機づけの研究の中で定義された。期待理論の「期待×価値モデル」を作り上げた V.H.ブルームの指導の下,1960 年代に達成動機づけの理論化を進めた J.W.アトキンソンの理論は,期待理論に類似した定式化がされており,「期待×誘意性モデル」と呼ばれる。

5.リーダーシップ研究のアプローチは,1940 年代までは,リーダーシップの源泉をリーダーの行動に求める研究が多く,ミシガン大学を中心にリーダーシップのコンティンジェンシー理論が展開された。しかし1950 年代以降,リーダーシップの源泉をリーダー個人の資質に求める研究が主流となり,オハイオ州立大学の PM 理論が展開された。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

選択肢 1 ですが
前半部分は妥当です。テイラーについての記述です。後半部分ですが、X 理論・Y 理論を唱えたのはマクレガーです。F.ハーズバーグは、動機づけ衛生理論を提唱しました。これは、職場満足と職場不満は同一の要因ではなく、動機づけ要因が職場満足と関連し、衛生要因が職場不満と関連する、という理論です。(H26no47)。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当な記述です。
アージリスらの組織学習に関する記述です。

選択肢 3,4 ですが
期待理論は、モチベーション=期待 × 報酬の主観的価値 と考える理論です。(H26no47)。1964 年にブルームにより提唱されました。選択肢 4 の「1930 年代に盛んになった期待理論」という記述は妥当ではありません。E.E.ローラー及び L.W.ポーターは、ブルームの期待理論に報酬への満足度という指標を加えた上で、期待理論を発展させました。

内的報酬となる感情や感覚をもたらし,満足感を与えてくれるのが,有能さと自己決定の感覚であるとする内発的な動機づけ理論を提唱したのは デシH28no50) です。従って、選択肢 3,4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
「コンティンジェンシー理論」とは、いかなる状況でも高い成果を発揮する最善なリーダーシップは存在せず、外部環境の変化に応じて変化すべきだとする考え方です。コンティンジェンシー(contingency)は、偶然性、偶発性という意味です。

PM 理論を提唱したのは三隅二不二です。目標達成に関する機能(P機能)と集団維持に関する機能(M機能)のそれぞれをリーダーがどの程度備えているかによって,リーダーの行動が四つのタイプ(PM 型,Pm 型,pM 型,pm 型)に類型化されるという理論です。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

コメント