公務員試験 H30年 国家一般職(行政) No.49解説

 問 題     

国際経営に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.1970 年代初頭のオイル・ショック以前においては,我が国の企業は,日本国内における低水準の賃金などに代表される企業特殊的優位を活用して,直接輸出によって国外市場に製品を投入していた。しかし,円高により輸出品が割高になると,日本国内で国家特殊的優位を有する企業は,その優位を活用してライセンシングやフランチャイジングなどの海外直接投資を行うようになった。

2.1970 年前後の米国企業の多国籍化を説明したものが,ボストン・コンサルティング・グループによる製品ライフ・サイクル仮説である。この考え方に従えば,製品の導入期には,米国内で生産されて米国市場で販売されるが,製品需要が拡大して成長期に入ると,製品デザインも標準化され他の国で現地生産を行うようになる。さらに,製品デザインの陳腐化の恐れがなくなる成熟期・衰退期には,途上国で生産し輸出するようになる。

3.M.E.ポーターは,多国籍企業の組織形態について,活動の配置と活動の調整の2 軸によって類型化した。これによると,配置は集中型だが調整のレベルが低い場合は,国際製品別事業部制が採られ,単純なグローバル戦略が適合的となる。また,配置が分散型で調整のレベルが低い場合は,地域別事業部制が採られ,マーケティングを分権化した輸出中心戦略が適合的となる。

4.1980 年代に日本企業が世界で成功を収めたことから,企業の組織文化に関する議論が盛んになる中,「強い文化」の重要性が注目され,T.E.ディールと A.A.ケネディは,理念,英雄,儀礼と儀式などが強い文化を形作る要素であるとした。

5.多国籍企業の典型的な経営スタイルは二つに大別することができる。一方はマルチドメスティック経営であり,活動ごとに比較優位が存在する場所に集中させて配置し,本国親会社が海外子会社を広範囲に統制する。他方はグローバル経営であり,自律的に経営活動を行う海外子会社を世界中に分散配置し,本国親会社は財務面など比較的狭い範囲のみを統制する。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

選択肢 1 ですが
海外直接投資とは、海外に会社を設立し経営することです。ライセンシングやフランチャイジングは海外直接投資ではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
1970 年代、ボストン・コンサルティング・グループが提唱したのは、プロダクト・ポートフォリオ・マネージメント(PPM) です。製品ライフ・サイクル仮説ではありません。記述は、バーノンの製品ライフ・サイクル仮説についてです。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
ポーターの分類によれば、配置が集中型で調整のレベルが低い場合、「マーケティング機能を分権化した輸出中心戦略」が適合的とされています。単純なグローバル化は「配置が集中型で、調整のレベルが高い場合」です。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当です。

選択肢 5 ですが
マルチドメスティック経営 と グローバル経営が逆です。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 4 です。

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