公務員試験 H30年 国家一般職(行政) No.50解説

 問 題     

動機づけに関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.F.W.テイラーは,怠業のうち主に自然的怠業の解消について研究を行った。彼は,楽をしたがるという人間の本能が原因の自然的怠業は管理者による標準の設定などによって除去することができるとして,特別な誘因を提供して人間の自発性を刺激する「自発性と誘因」の管理法を採る必要があると主張した。

2.J.W.アトキンソンの達成動機づけモデルでは,目標達成がもたらす価値である成功の誘因価を,目標達成の主観的な成功確率の関数であると仮定し,成功の誘因価は,簡単な課題よりも主観的な成功確率が低い困難な課題において成功した方がより大きくなるとした。

3.内発的動機づけの検証実験では,金銭的報酬が及ぼす二つの側面が確認された。このうち統制的側面は,報酬の受け手を現在の職務にとどまらせる作用のことで,報酬には内発的動機づけを高める効果があることを示している。一方,情報的側面は,報酬の受け手の市場価値を示すものであり,市場価値の高低にかかわらず,有能さと自己決定の感覚を弱める作用をもつ。

4.期待理論は,1930 年代に始まる人間関係論の研究を整合的に説明する理論的枠組みである。その代表的研究者であるV.H.ブルームとE.L.デシは,多くの先行研究を通じて,職務遂行は目的達成のための手段にすぎず目的そのものとは関係がないことや,成果が報酬をもたらすという関係を強めることで自動的にモチベーションや生産性が高まることを示した。

5.ホーソン実験は,経営学史上でも画期的な科学的研究である。ホーソン工場における照明実験や継電器組立作業実験の結果から,物理的条件と作業能率の間に強い相関関係が見いだされたことにより,課業管理と特別な誘因の提供という二つの要因によって,工場労働者の生産性の水準は説明可能であることが明らかになった。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

選択肢 1 ですが
テイラーは、怠業における「組織的怠業」に注目しました。そして、組織的怠業は、適切な標準設定と報酬設定により克服できると考えました。(H26no47)。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当です。
アトキンソンの達成動機づけモデルについての記述です。

選択肢 3 ですが
E.L.デシが行った内発的動機づけに関する実験に関する記述です。統制的側面としての効果とは,外的報酬が与えられると,活動の目的が外的報酬の獲得にすり替わるため,動機づけを弱めてしまうことです。一方、情報的側面としての効果は、外的報酬の与え方によっては,報酬の受け手に有能で自己決定的であることが伝わるため,動機づけを強める場合があることです。(H28no50)。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
期待理論は、モチベーション=期待 × 報酬の主観的価値 と考える理論です。(H26no47)。1964 年にブルームにより提唱されました。成果が報酬をもたらすという関係を強めることで自動的にモチベーションが高まるといった理論ではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
G. E. メーヨーらが行ったホーソン実験は、作業能率・生産性は、物理的環境条件や作業方法と一義的に結び付くものではなく、人間関係、監督の在り方、作業者個々人の労働意欲などと密接な関係があることを明らかにしました。(H28no50)。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

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