公務員試験 H29年 法務省専門職員 No.11解説

 問 題     

リーダーシップに関する理論についての記述として最も妥当なのはどれか。

1.ブレークとムートン(Blake, R. R. & Mouton, J. S.)が提唱したマネジリアル・グリッド (managerial grid)は,リーダーに必要とされる要件を,生産への関心と人間への関心の二次元から捉え,それぞれ1 〜9 の9 段階に分けて表したものである。典型的なリーダーシップの類型として, 1・1 型, 1・9 型, 9・1 型, 9・9 型, 5・5 型の五つが挙げられているが,このうち, 5・5 型が最も理想的なスタイルとされている。

2.三隅二不二が提唱した PM 理論では,目標達成に関する機能(P機能)と集団維持に関する機能(M機能)のそれぞれをリーダーがどの程度備えているかによって,リーダーの行動が四つのタイプ(PM 型,Pm 型,pM 型,pm 型)に類型化され,組織の生産性は,短期的には PM 型 > pM 型 > Pm 型 > pm 型の順に高くなるが,長期的にはPM 型 > Pm 型 > pM 型 > pm 型の順に高くなるとされている。

3.フィードラー(Fiedler, F. E.)が提唱した条件即応モデル(contingency model)では,リーダーを取り巻く状況によって最適なリーダーシップのスタイルは異なるとされ,リーダーシップの指標としてLPC 得点が用いられている。リーダーと他の成員との関係が悪く,課題の構造化の程度が低く,リーダーの立場が弱い状況では,LPC 得点の高いリーダーが有効であるとされている。

4.ハウス(House, R. J.)が提唱したパス・ゴール理論(path-goal theory)では,リーダーが成員に対して,目標(ゴール)を達成するために通るべき道筋(パス)を適切に示すことが重要である。したがって,目標達成には,課題の性質にかかわらず,リーダーは成員に対して仕事の進め方を明確に示すような主導的・指示的なリーダーシップを発揮することが有効とされている。

5.ハーシーとブランチャード(Hersey, P. & Blanchard, K. H.)が提唱したSL 理論(situational leadership theory)又はライフ・サイクル論では,能力と意欲に基づく成員の成熟度が時系列的に4 段階に区分され,それぞれの段階で効果的なリーダーシップのスタイルを示している。リーダーシップのスタイルは,課題志向と人間関係志向の2 軸の高低の組合せで表されるが,成員の成熟度が高い状況では,両志向が共に低いスタイルが有効とされている。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

選択肢 1 ですが
ブレークとムートンのマネジリアル・グリッド論において、生産への関心も人間への関心も高い 9.9 型が理想的リーダーとされます。「5.5」ではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
短期的に高いのは、課題達成機能が高い P を有するリーダーシップと考えられます。従って、短期的には PM > Pm > pM > pm です。 長期的に高いのは、人間関係志向の集団維持機能が高い M を有するリーダーシップと考えられます。従って、長期的には PM > pM > Pm > pm です。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
LPC が高いリーダーとは、人間関係志向のリーダーです。成員との関係が不良ということは、状況統制が低いといえるため、LPC が低く課題達成志向のリーダーの方が有効であると考えられます。選択肢 3 は誤りです。類題 H27no10

選択肢 4 ですが
ハウスのパス・ゴール理論では、リーダーシップの効果は、課題の特徴や部下の特性など、状況要因に規定されると考えます。「課題の性質にかかわらず・・・主導的・指示的なリーダーシップを発揮することが有効」ではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当です。
ハーシーとブランチャードが提唱したライフサイクル理論についてです。

以上より、正解は 5 です。

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