公務員試験 H29年 法務省専門職員 No.10解説

 問 題     

愛着に関する記述 ア〜エ のうち,妥当なもののみを挙げているのはどれか。

ア.エインズワース(Ainsworth, M. D. S.)は,乳幼児期に養育者との温かい関係を十分に享受できなかった,いわゆるマターナル・ディプリベーションにさらされた子供に,様々な心身発達の遅滞や歪曲が多く認められたことから,他者との間に親密な関係性を取り結ぶことの心理生物的意味の大きさを悟り,この研究からアタッチメント理論を確立した。

イ.人見知りとは,生後一定期間を経過すると,乳児が見知らぬ人を見て泣き出したり,母親にしがみついて顔をうずめたりするなど,怖がったり嫌がったりするような反応を見せるようになることである。人見知りが生じるのは,親しい人とそうでない人との弁別ができ,特定の個人への愛着が成立していることを示すと考えられる。

ウ.DSMー5(精神疾患の診断・統計マニュアル)における分離不安症は,未来や過去の行動,個人の能力や外見に関する過剰な恐怖や不安が高まり,その状態が 18 歳未満では少なくとも4週間,成人では 6 か月以上持続するものである。発症に際して遺伝的な要因はなく, 1 歳前後の時期に養育者や家族構成員などの愛着の対象と適切な愛着関係を築くことができなかったことが要因であるとされている。

エ.愛着に関する障害には,抑うつ症状や引きこもり行動を伴う内在化障害として表現される抑制型と,脱抑制と外在化行動によって特徴づけられる脱抑制型の二つに分けることができる。DSMー5 において,いずれの型も,診断には少なくとも発達年齢が 9 か月に達していることが必要であるとされている。

1.ア,イ
2.ア,ウ
3.イ,ウ
4.イ,エ
5.ウ,エ

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

記述 ア ですが
いわゆるマターナル・ディプリベーションにさらされた子供に着目し、アタッチメント理論を確立したのは「ボウルビィ」です。エインズワースは、ストレンジ・シチュエーション法を開発し、アタッチメントの個別的要素について体系的理論を打ち立て,それを具体的に測定する道を切り開きました。記述 ア は誤りです。

記述 イ は妥当です。
人見知りについての記述です。

記述 ウ ですが
分離不安症とは「愛着のある人物や場所から離れることに対し不安を感じること」です。「未来や過去の行動、個人の能力や外見に関する過剰な恐怖や不安」ではありません。記述 ウ は誤りです。

記述 エ は妥当です。
愛着に関する障害についての記述です。

以上より、正解は 4 です。

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