公務員試験 H29年 法務省専門職員 No.9解説

 問 題     

発達の研究に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.ピアジェ(Piaget, J.)は,子供が集団の中でコミュニケーションを取ることを目的とせずに独り言を言うことに注目し,発達過程における自閉的思考から社会的思考への移行段階として自己中心的思考があり,自己中心語はそれに付随するものと考えた。ヴィゴツキー(Vygotsky, L. S.)はこれに同調し, 3 歳頃から徐々に自己中心語が消え,不要なものになっていくと指摘した。

2.ピアジェは,いかなる認識活動にも,適応,体制化等の不変的機能があり,外界への適応の働きの中には同化と調節の働きがあるとした。同化に対して調節が優位になると,「遊び」という活動になり,調節に対して同化が優位になると「模倣」という活動になるなど,同化と調節は表象機能の形成の基礎となると指摘した。

3.ピアジェは,認知機能の発達過程を,ある程度均衡化した構造から,より均衡化した構造への移行であると考え,いくつかの発達段階に区切った。これらの段階はある基本的な性質によって,他の段階と区別され,短い移行期の間に比較的急激に出現するが,各段階の出現順序は一定であり,後の段階はその前の段階から派生し,それを統合したものとされる。

4.ピアジェは,発生的認識論の中で,前操作期を二つの下位段階に分けた。第一下位段階では,行為の目的と手段を協応させ,新しい手段を発見できるようになり,第二下位段階では,例えば直角に曲げたひもの一方を引っ張るとその一辺は長くなり,他の辺は短くなることを予見できるようになるなど,変化した長さの数量化はできないまでも,長くなった分と短くなった分が等しいことは分かるようになるとした。

5.ピアジェは,発生的認識論の中で,具体的操作期になると,頭の中で論理に従って情報を区分,結合し,変形するという操作的思考が可能になるとした。これは,例えば,口の大きさが異なるコップ間で水を移し替えても,内容量は変化しないという保存概念の獲得や,何羽かのカラスを観察して「カラスは黒い」という帰結を導くという帰納推理全般ができるようになるということで
ある。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが
ピアジェとヴィゴツキーは、外言と内言について異なる見解に立ちました。ピアジェは「内言→外言」の移行期に表れるものと考え、ヴィゴツキーは「外言→内言」の移行期に表れるものと考えました。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
シェマ(概念)獲得 → 同化と調節の繰り返し を「認知発達の基礎」と考えたのがピアジェです。「表象機能」の形成の基礎ではないと考えられます。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当です。
認知力の成長を4段階に分けて考えました。認知発達段階説です。

選択肢 4 ですが
前操作期は 2~7 歳とされます。この時期の特徴は、自己中心性、アニミズム(非生物も擬人化する傾向)、保存性の未発達 です。記述の「第二下位段階では・・・」の内容は、保存性についてです。未発達であり、分からないと考えられます。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
具体的操作期(7~11歳)は、具体的対象に対してのみ、論理操作が可能な時期です。「頭の中で・・・情報を区分、結合し、変形する」ことができるようになるのは「形式的操作期」と考えられます。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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