公務員試験 2020年 国家一般職(教養) No.37解説

 問 題     

近現代の思想家に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.実存主義の代表的な思想家であるロールズは,『監獄の誕生』などを著した。彼は,近代の監獄パノプティコンは,囚人に看守の視線を内面化させ,支配に服従する従順な主体を形成するとし,権力が身体を統制するそのような仕組みは学校や工場においてもみられるとした。

2.功利主義の代表的な思想家であるJ.S.ミルは,『功利主義』などを著した。彼は,快楽には質と量があり,量が同一でも質に差があれば,高級な快楽の方が優れているとし,また,精神的快楽は肉体的快楽よりも質的に優れているとする質的功利主義を主張した。

3.プラグマティズムの代表的な思想家であるベンサムは,『人間の条件』などを著した。彼は,人間の活動力の形態を「労働」,「仕事」,「活動」に区分し,言葉を媒介にした相互的な意思疎通により公共的な場をつくり出す「活動」を重視した。

4.批判的合理主義の代表的な思想家であるハンナ=アーレントは,『存在と無』などを著した。彼女は,人間を規定する一般的な本質というものはなく,人間は自己の主体的な選択と決断によって生きると考え,「実存は本質に先立つ」と表現した。

5.構造主義の代表的な思想家であるフッサールは,『あれかこれか』などを著した。彼は,知性や観念は,人間が生活において実践的な問題を解決するための道具であると考え,問題解決のために知性を働かせることや自由な討論を行うことを重視した。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

選択肢 1 ですが
「監獄の誕生」の著者は、ミシェル・フーコーです。ロールズの代表的著書は「正義論」です。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当です。
J.S.ミルについての記述です。(参考 H25no37)。

選択肢 3 ですが
「人間の条件」の著者は、ハンナ・アレントです。ベンサムではありません。選択肢 3 は誤りです。(参考 H26 国家一般職(行政)専門試験 no2)。

選択肢 4 ですが
「存在と無」の著者は、サルトルです。(参考 H24no37)。ハンナ = アレントではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
フッサール現象学の代表的思想家です。構造主義の代表的な哲学者は レヴィ=ストロースなどです。また、「あれかこれか」はキルケゴールの著作です。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

 

コメント