公務員試験 2020年 国家一般職(行政) No.67解説

 問 題     

次は,R.P.ドーアの『学歴社会』に関する記述であるが,A,B,Cに当てはまるものの組合せとして妥当なのはどれか。

第二次世界大戦後に独立した第三世界の開発途上国は,先進諸国に倣って,近代化・産業化の推進に不可欠の装置として,学校教育システムの創出と発展に努めてきた。

しかし,1970 年代に入る頃から,近代化・産業化の進度や構造に関わりなく,上級学校への進学者の急増と職業の世界での学歴 A 化が進み,その結果として,人間形成よりも試験合格と学歴取得が自己目的化するという,教育の「学歴稼ぎ」化が顕著となった。

ドーアは,それを産業社会の「文明病」とみなし,病理現象が開発途上国に先鋭な形で顕在化するのは,産業化のB のゆえであるとした。

その打開策として,ドーアは,I.イリイチに代表される C を批判した上で,学校教育システムの持つ社会的選別機能の縮小又は排除を提言した。このドーアの提言の特徴は,個人の才能に生得的な差異が存在することを前提とし,しかも,その才能と威信,権力,富などの社会的資源との対応的な配分関係を断ち切り,社会的に操作する必要があることを認めている点にある。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

A の直前に注目すると、「上級学校への進学者の急増」とあります。インフレーションは「膨張」、デフレーションは「縮小」という意味です。急増と対応するのは、インフレーションと考えられます。正解は 1 ~ 3 です。

文章から「開発途上国は、先進諸国に倣って」後から追いかけてきて、「病理現象が開発途上国に先鋭な形で顕在化」とあります。後発であるがゆえの現象といえます。B と対応するのは「後発効果」が妥当と考えられます。ちなみに、ハロー効果は、光背効果、後光効果とも呼ばれる、認知的ゆがみの一つです。顕著な特徴に引っ張られて、他の特徴についての評価が歪められることです。(H26no61)。正解は 1 or 2 です。

「脱学校論」は、イヴァン・イリイチの造語です。「脱学校」というキーワードと「イヴァン・イリイチ」という人名が対応できるとよいです。C は脱学校論が当てはまります。ちなみに「文化的再生産」とは、家庭で身に付けた階級文化が,学校での成功のチャンスを左右し,学校が文化を通じた階級の再生産に寄与することです。提唱したのはブルデューです。(H28no58)。

以上より、正解は 1 です。

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