公務員試験 2020年 国家一般職(行政) No.50解説

 問 題     

組織行動に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.J.G.マーチは,凝集性の高い集団(グループ)では,多様な意見の表出が抑えられ,情報も一元化されてノイズが低減されるため,メンバーの意見を早期に一本化することができる「グループシンク」が最適な意思決定をするための思考様式であるとした。

2.F.E.フィードラーは,①リーダーとフォロワーとの関係,②タスクが構造化されている程度,③リーダーの職位に基づく権限の強さという三つの要因の組合せによって状況好意性が決まるとし,その程度とリーダーシップ・スタイルとの関係を研究した結果,状況好意性が高いとき及び低いときに高い成果となるリーダーシップ・スタイルと,中程度のときに高い成果となるリーダーシップ・スタイルが異なるとした。

3.V.H.ブルームの期待理論においては,「行為→成果(一次の成果)→報酬(二次の成果)」という関係が想定されている。この理論では,職務に対する動機づけの強さは,①ある行為からどのような成果が得られるのかに関する客観的確率である「手段性」,②ある成果からどのような報酬が得られるのかに関する客観的確率である「期待」,③得られる報酬の魅力度を金銭額で表した「誘意性」という三つの変数の和によって決まる。

4.ミシガン研究では,リーダーシップ・スタイルを,部下が目標の達成に向けて効率的に職務を遂行できるような環境を整える「構造づくり」と,仕事上の相互信頼の醸成や部下の気持ちへの気配りによって特徴付けられる「配慮」の2 次元で捉え,「配慮」の実施には長期間を要するため低水準の達成にとどめつつ,「構造づくり」を高水準で達成するようなリーダーシップ・スタイルが最も高い成果をあげることが示された。

5.H.A.サイモンは,意思決定に関する二つの人間観を対比した。一つは,全ての代替案の中から最も良いものを選ぶのではなく,あらかじめ決められた基準を満足する代替案があれば,それを選択することにより利益を最大化しようとする「経済人」モデルである。もう一つは,全ての利用可能な代替案を挙げて,それら全てについて過去の経験と知識に基づいて評価することにより最適な代替案を選択しようとする「経営人」モデルである。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

選択肢 1 ですが
集団凝集性が高いとは、メンバーの心理的な帰属意識が高く、連帯感や仲間意識が強いということです。この際、グループ・シンクや集団思考と呼ばれる「集団で決定された意思や方針の質が、個人で考えたものよりも劣ってしまう現象」が起きやすくなると、アメリカの社会心理学者アーヴィング・ジャニスが指摘しました。マーチではありません。また「最適な意思決定をするための思考様式」ではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当です。
フィードラーが提唱したコンティンジェンシーモデルに関する記述です。(参考 法務省専門職 H30no27)。

選択肢 3 ですが
ブルームの期待理論は、モチベーション=期待 × 報酬の主観的価値 と考える理論です。(H30no50)。報酬の主観的価値は更に「提示された報酬の魅力度を表す 誘意性」と「目指すさらに上の目標を達成する際にどれくらい有用かどうかを示す 道具性」の2つに分解されます。これらの「積」です。「和」ではありません。積なので、どれかが0だと、他の値がどんなに高くてもモチベーションが大きくならないという理論です。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
ミシガン研究は、リーダーに対し、人間関係と業績のどちらを重視しているかを調査し、まとめた研究です。結果、「業績よりも人間関係を重視しているチーム」の生産性が高いという結果でした。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
「経済人」は、「常に物質的・経済的欲望を最大限に満足させるよう行動する存在」というモデルです。「限定合理性しか持たない人間モデル」が、サイモンが提唱した「経営人」モデルです。(H26no49)。記述とモデルの名前の対応が逆と考えられます。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

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