公務員試験 2019年 国家一般職(行政) No.65解説

 問 題     

次は,承諾を得るための要請法についての実験に関する記述であるが,実験内容と実験で検討した要請法の組合せとして妥当なのはどれか。

A.大学生に電話をかけて,「心理学の実験に参加してほしい。」と要請して承諾を得てから,その実験が朝の7 時から始まることを告げる条件と,最初から「朝の7 時に始まる心理学の実験に参加してほしい。」と要請する条件とを比較した。その結果,前者の条件では約60 % が承諾し,そのほぼ全員が実際に実験室に現れたのに対し,後者の条件では約30 % しか承諾せず,実際に実験室に現れたのは,その約80 % に過ぎなかった。この実験は,まず魅力的で有利な条件で承諾させておいて,後になって不利な条件を提示する要請法の有効性を検討している。

B.大学生に「非行少年の施設で,週2 時間ずつ2 年間,ボランティアのカウンセラーをやってくれないか。」と要請し,ほとんど全ての学生に断られた後,次に「非行少年たちが動物園へ行くので, 2 時間ほど付き添ってほしい。」と要請すると,約50 % の大学生が承諾した。一方,最初から「非行少年たちが動物園へ行くので, 2 時間ほど付き添ってほしい。」と要請した場合に承諾した大学生は約20 % に過ぎなかった。この実験は,まず拒否されるのが当然のような大きな要請をして相手が拒絶した後で,比較的小さな本来の目的である要請を行う要請法の有効性を検討している。

C.郊外の住宅街の家庭を訪問し,安全運転の立法化を求める嘆願書への署名又はスローガンを書いた小さなステッカーの掲示を要請した。その2 週間後,最初とは異なる実験者が訪問し,交通安全を呼びかける,大きく体裁の悪い看板を庭に設置するように要請したところ,以前に嘆願書への署名を要請された条件では約50 %,小さなステッカーを貼ることを要請された条件では約80 % が,看板を設置することを承諾した。一方,事前に要請を受けなかった条件では,看板を設置することを承諾したのは約20 % に過ぎなかった。この実験は,まず受け入れやすい小さな要請を行って承諾させた後で,本来の目的である要請を行う要請法の有効性を検討している。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

「フット・イン・ザ・ドア法」は、はじめに承諾しやすい条件を出し、だんだんと要求を高くしていき、「~がいいなら、~~もいいはずですよね。」と要求していくことで、一貫性の原理により断りづらくさせるという手法です。(H28no65)

本命の要求を通すために、初めは過大な要求を出し、断らせることで「借り」を感じさせ、返報性の心理として、なにかしら返したいという状況を作り、その後の要求を通しやすくするという方法は、「ドア・イン・ザ・フェイス法」です。(H28no65)。

「ロー・ボール法」は、はじめに承諾しやすい条件を出した上で、都合の悪い条件を付け足したり、一部の条件を取り下げるという手法です。フット・イン・ザ・ドア法と同様、一貫性の原理により断りづらくさせる手法です。(法務省専門職 H26no29)。

記述 A ですが
はじめに承諾しやすい条件 → 都合の悪い条件 の流れです。「ロー・ボール法」です。

記述 B ですが
過大な要求→断り→要求 の流れです。「ドア・イン・ザ・フェイス法」です。

記述 C ですが
はじめに承諾しやすい条件 → 高い要求 の流れです。「フット・イン・ザ・ドア法」です。

以上より、正解は 3 です。

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