公務員試験 H28年 国家一般職(行政) No.65解説

 問 題     

社会的認知や社会的行動に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.最初に大きな要請をして相手にわざと拒絶させておいて,その後に最初より小さい要請を行う方法を,フット・イン・ザ・ドア・テクニックという。例えば,交渉場面では,最初から妥協できる条件を出すのではなく,まず相手がとても受け入れられないような条件を出してから本当の交渉を始めると有利に交渉できる。

2.自分の能力が高く評価され過ぎるのを回避しようとして,自分に有利な条件があることを他者に主張したり,有利な条件を自ら作り出すことがある。こうすることによって,成功した場合に,その原因をあらかじめ主張しておいた有利な条件のせいにすることができる。こうした行為を,セルフ・ハンディキャッピングという。

3.自分に関する重要な次元については,過去経験から抽出した表象が高度に組織化された形で貯蔵され,認知構造として機能する。このような自己知識をセルフ・スキーマという。一方,自分以外のことについては,セルフ・スキーマに関連しない情報の方がアクセスされやすいため,他者についての判断の際には,セルフ・スキーマは準拠枠とはならない。

4.同じメッセージでも,一般に送り手の信憑性が高い方が説得の効果は大きい。一方,信憑性の低い送り手からのメッセージであっても,ある程度の時間が経過して送り手の印象が薄れると,内容次第で説得効果が効いてくることがある。後になってじわじわと現れてくるこうした効果を,スリーパー効果という。

5.人々は,自分がもっている特性,意見,行動はユニークでオリジナリティがあるが,自分のものとは異なる特性,意見,行動は,一般的でつまらないものだとみなす傾向をもっている。この傾向をフォルス・コンセンサス効果という。例えば,「自分は楽観的だ」と思っている人は,「自分は悲観的だ」と思っている人の方がより一般的で,より多い比率で存在すると推測する。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

選択肢 1 ですが
「フット・イン・ザ・ドア法」
は、はじめに承諾しやすい条件を出し、だんだんと要求を高くしていき、「~がいいなら、~~もいいはずですよね。」と要求していくことで、一貫性の原理により断りづらくさせるという手法です。本命の要求を通すために、初めは過大な要求を出し、断らせることで「借り」を感じさせ、返報性の心理として、なにかしら返したいという状況を作り、その後の要求を通しやすくするという方法は、「ドア・イン・ザ・フェイス法」です。

選択肢 2 ですが
テスト直前に勉強している人ほど言いがちな「全然勉強してないー」が、セルフ・ハンディキャッピングの代表例です。たとえ失敗しても自尊心を保てるよう、あらかじめ自分にハンディキャップがあると主張したり、実際にハンディキャップを作り出すことをセルフ・ハンディキャッピングといいます。「有利な条件があることを主張したりすること」ではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
自己スキーマに関連する情報処理と関係ない情報処理では、使用する脳の部位が異なり、関連情報への感受性が自己スキーマに関連するものの方が高くなります。そして、自己スキーマは自分だけではなく、他者認知においても利用されます。「自分以外のことについては、セルフ・スキーマに関連しない情報の方がアクセスされやすい」わけではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当です。
スリーパー効果についての記述です。

選択肢 5 ですが
フォルス・コンセンサス効果とは、「自分が常に多数派と思い込む、認知バイアスの一種」です。「自分のものとは異なる・・・は、一般的でつまらない」と見なす傾向ではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 4 です。

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