公務員試験 2019年 国家一般職(行政) No.64解説

 問 題     

子供の定型的な発達に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.乳児が,生後3 か月頃から親しい人と見知らぬ人とを区別し,見知らぬ人を避けようとすることを人見知りという。生後6 か月頃に人見知りが消失した後に,社会的な関わりの対象が拡大し,家族等の見慣れた者に限らず,相手がほほ笑めば自分もほほ笑み返す社会的微笑が見られるようになる。

2.目の前にある物体がハンカチで覆われても,その物体は依然として存在し続けており,このとき,我々は自分の視野から消えた物体を消えてなくなったとは考えない。ピアジェ(Piaget, J.)は,このような対象の永続性の概念は,生まれながらに備わっているものではなく,感覚―運動期に獲得されると考えた。

3.他者にも心的状態があると想定し,それに基づいて他者の行動を予測したり,他者の行動の背後にある心的過程を説明したりするために必要な能力を「心の理論」という。バロン-コーエン(Baron-Cohen, S.)らは,「心の理論」の検査法の一つとされる誤信念課題を用い,定型発達児や自閉症児に比べて,ダウン症児は誤信念課題の通過率が低いことを示した。

4.人が特定の対象に対して抱く親密で情緒的な絆をアタッチメントという。アタッチメントの個人差を測定する方法の一つであるストレンジ・シチュエーション法において,養育者との分離時に泣いたり混乱を示したりせず,養育者との再会時に養育者から目をそらしたり,明らかに養育者を避けたりするような行動を一貫して示す乳児は,安定型に分類される。

5.毛布やぬいぐるみなど,乳幼児が愛着を示す特定の対象を移行対象という。ウィニコット(Winnicott, D.W.)は,移行対象が,主観的体験様式から客観的体験様式への,また,母子未分化な状態から分化した状態への「移行」を阻害するものであるとし,移行対象を持たない方が望ましいと考えた。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

選択肢 1 ですが
「3 ヶ月微笑」、「8 ヶ月不安」です。(法務省専門職 H27no26)。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当です。
永続性の概念についての記述です。

選択肢 3 ですが
前半部分は妥当です。心の理論についての記述です。後半部分ですが、自閉症児の通過率が低いことが示されました。ダウン症児ではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
エインズワースは「乳児の愛着の質」を調べるためのストレンジ・シチュエーション法を開発しました。これは乳児と母と知らない人が部屋に入り、母や見知らぬ人が出入りする際の反応を見る実験方法です。結果は回避型、安定型、アンビバレント型、分類不能型の4つに分類されます。記述は「回避型」です。(法務省専門職 H30no25)。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
移行対象は、母子未分化な状態から分化した状態への「移行」を促すものと考えられています。「移行を阻害し、移行対象を持たない方が望ましいと考えた」わけではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

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