公務員試験 H27年 法務省専門職員 No.26解説

 問 題     

発達に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1. 乳児は、生後3か月頃から、養育者以外の人に抱かれると泣くといった人見知りが始まり、生後8か月頃になると、養育者以外の人に対してほほえむ「社会的微笑」が見られるようになる。ボウルビィ (Bowlby, J.) は、そうした発達過程を経て、生後12か月頃には愛着関係を構築する基盤が成立するとした。

2. ヴィゴツキー (Vygotsky, L. S.) は、子どもの知的発達を、自力で問題解決できる水準と、他者からの援助と協同によって達成可能になる水準とに分け、この二つの水準のずれの範囲を「発達の最近接領域」と呼んだ。さらに、教育の役割は、この領域に働き掛けることで現時点での発達水準を引き上げるとともに、潜在的な発達水準を広げることであるとした。

3. 対象に対する注意を他者と共有することを「共同注意」という。エインズワース (Ainsworth,M. D. S.) は、共同注意は養育者とのやりとりを通じて獲得されると考え、養育者とどのように注意を共有するかを観察する方法として、分離場面と再会場面とを組み込んだストレンジ・シチュエーション法を考案した。

4. 他者の心を推定したり、他者が自分と異なる信念をもっているということを理解したりする心の働きを、「心の理論」という。他者の考えを推量できるか否かを調べるための課題である「視覚的断崖」を自閉スペクトラム症児に行わせると、4歳頃まで課題を達成できないことが明らかになっている。

5. 子どもが、大人と自分を同一視し、ふさわしい行動を習得することを「社会的参照」という。例えば、乳児が新奇な玩具を見たとき母親が肯定的な表情をするだけでは乳児は玩具に手を伸ばさないが、実際に母親が手を伸ばすのを見ると乳児も手を伸ばし、別の場面や母親不在の場面でも手を伸ばすようになる。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

選択肢 1 ですが
「3 ヶ月微笑」、「8 ヶ月不安」です。3 ヶ月と 8 ヶ月が逆です。また、ボウルビィは、愛着の 4 段階発達説を述べました。大体 3 歳頃までに愛着関係の基盤が成立するとしました。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当な記述です。

選択肢 3 ですが
エインズワースは「乳児の愛着の質」を調べるためのストレンジ・シチュエーション法を開発しました。これは乳児と母と知らない人が部屋に入り、母や見知らぬ人が出入りする際の反応を見る実験方法です。結果は回避型、安定型、アンビバレント型、分類不能型の4つに分類されます。「共同注意」に関する実験法ではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
「視覚的断崖」は、ギブソンが開発した「奥行き知覚」を有しているかを調べる実験です。「他者の考えを推量できるか否か調べる課題」ではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
「社会的参照」は、周囲の人の表情、態度、反応などをみた上で行動を決定する現象です。「母親が肯定的な表情をするだけでは、、、手を伸ばさない」というのは、社会的参照の例ではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

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