公務員試験 2019年 国家一般職(行政) No.63解説

 問 題     

学習理論に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.レスポンデント条件付けにおいて,自発的な反応が生じるたびに強化される場合を連続強化と呼ぶのに対して,反応がときどきしか強化されない場合を部分強化又は間欠強化と呼ぶ。一般に,連続強化で訓練された行動では,部分強化で訓練された行動よりも消去が生じにくい。

2.系統的脱感作法では,不安や恐怖を引き起こす刺激の提示頻度を段階的に増加していくことで,特定の刺激に対する患者の不安や恐怖を徐々に克服させていく。これは,オペラント条件付けの原理を応用した行動療法の一つである。

3.逃げることができる状況であっても,不快な状況に繰り返し置かれると,自ら状況を変えようとするための反応や行動をする動機付けが弱まる現象があり,学習性無力感と呼ばれている。学習性無力感は,自らが無力であるということが学習された結果であり,ヒトに特有の現象である。

4.ある学習をしたことが,その後の別の学習に影響を及ぼすことを学習の転移と呼ぶ。特に,身体の一方の側の器官(例えば右手)を用いて行った学習が,その後でもう一方の側の器官(例えば左手)を用いて行う学習に影響する場合を,両側性転移と呼ぶ。

5.自らが行動し,その行動に対する強化を受けることがなくても,他者の行動やその結果を観察するだけで学習が成立し,その後の行動に変化が生じることがある。学習が成立する過程が行動としては顕在化しないことから,このような学習は潜在学習と呼ばれる。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

選択肢 1 ですが
内容が逆です。部分強化で訓練された行動の方が消去が生じにくいことが知られています。部分強化効果と呼ばれます。

選択肢 2 ですが
系統的脱感作法とは、不安や恐怖反応を引き起こしている状態に対して、それらと両立しない反応 (弛緩反応) を同時に引き起こす (脱感作) ことを繰り返し、不安や恐怖反応を段階的に消去する技法です。古典的条件づけに基づく方法です。(H27no61)。オペラント条件付けの原理を応用したものではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
学習性無力感に関する研究は、始めイヌで行われ、ヒトにも同様の現象が見られました。「ヒトに特有の現象」ではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当です。
両側性転移に関する記述です。

選択肢 5 ですが
潜在学習とは、学習意識や意図がないにもかかわらず、繰り返し作業を行うことにより自然と体が学習してしまう現象です。観察学習についての記述です。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 4 です。

コメント