公務員試験 2019年 国家一般職(行政) No.62解説

 問 題     

情動や感情に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.ジェームズ(James, W.)とランゲ(Lange, C.G.)は,刺激によって惹起された身体反応が脳に伝達されることによって情動体験が生じるとするキャノン(Cannon, W.B.)とバード(Bard, P.)の中枢起源説を批判し,知覚された情報が脳に伝達され,身体反応と情動体験が同時に生じるとする末梢起源説を主張した。

2.シャクター(Schachter, S.)らは,薬剤によって引き起こされた生理的喚起の状態を実験参加者がどのように解釈・評価するかによって,情動体験の質は異なることを示した。彼らは,このような結果から,情動体験の質は生理的喚起と認知的評価の双方に基づいて決まるという情動の二要因説を主張した。

3.トムキンス(Tomkins, S.S.)は,情動を喚起する刺激を知覚すると,その情動に固有の各種表情筋が反応し,それらが脳に伝達されることによって情動体験が生まれるとする仮説を提唱した。この仮説は,顔面フィードバック仮説又は表情フィードバック仮説と呼ばれており,中枢起源説を発展させたものであるといえる。

4.どのような刺激であっても,繰り返し接することでその刺激に対する好感情が増していく現象を単純接触効果という。単純接触効果は,提示時間が極めて短く,再認が困難な刺激の場合にも生起することから,ラザラス(Lazarus, R.S.)は,感情は認知の関与がなくとも生起し得ると主張した。

5.認知と感情の関わりを示す一つの例として,気分一致効果と呼ばれる現象がある。これは,過去の楽しかったことを思い出したり考えたりしていると楽しい気分になり,逆に,過去の悲しかったことを思い出したり考えたりしていると悲しい気分になるというように,その時に認知していることの感情価と一致するように気分が変動する現象である。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

選択肢 1 ですが
ジェームズとランゲによる抹消起源説は、外部刺激→身体反応→反応の意識化→情動 という流れで情動が起きるという説です。記述は説の内容が逆です。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当です。
シャクターらによる、情動のニ要因説に関する記述です。

選択肢 3 ですが
トムキンスの顔面フィードバック仮説は、末梢起源説を発展させたものといえます。中枢起源説を発展させたものではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
単純接触効果を発見したのはザイアンスです。記述はザイアンスについてです。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
気分一致効果とは、記銘された事柄の感情価と想起する人の感情状態とが一致している場合の方が,一致していない場合よりも記憶が優れるという効果のことです。(法務省専門職 H30no11)。

以上より、正解は 2 です。

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