公務員試験 H30年 法務省専門職員 No.11解説

 問 題     

感情が社会的判断に及ぼす影響に関する記述ア〜エのうち,妥当なもののみを挙げているのはどれか。

ア.バウアー(Bower, G. H.)は,感情を記憶内の一つのノードと捉え,感情のノードとそれに関連する感情価を持つ記憶が結びついているという感情ネットワークモデルを提唱した。このモデルにより,記銘された事柄の感情価と想起する人の感情状態とが一致している場合の方が,一致していない場合よりも記憶が優れるという気分一致効果を説明することができる。

イ.シュワルツ(Schwarz, N.)は,感情情報機能説を提唱し,対象の評価や判断が気分により左右されるのは,人が自分の感情状態を情報の一つとして利用するためであると主張した。そのため,気分の原因が明確であるときや,他に判断を行うための有力な情報があるときなどには,気分一致効果が現れないと考えた。

ウ.フォーガス(Forgas, J. P.)は,社会的判断の際の処理方略として,直接アクセス型,動機充足型,ヒューリスティック型,実質処理型の4 種類を想定する感情混入モデルを提唱した。直接アクセス型とヒューリスティック型は感情の影響を余り受けないが,動機充足型と実質処理型は影響を強く受けると考えた。

エ.戸田正直は,様々な感情が持つ生物学的適応機能としての意味を明らかにし,更に各種感情間のシステム的相互連関性を解明するための記述理論的枠組みを提供することを目的とするアージ理論を提唱した。この理論では,怒りや恐怖のようなネガティブな感情は争いを引き起こすため,適応的には機能しないと考える。

1.ア,イ
2.ア,ウ
3.ア,エ
4.イ,ウ
5.ウ,エ

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

記述 ア は妥当です。
バウアーの感情ネットワークモデル、気分一致効果についての記述です。

記述 イ は妥当です。
シュワルツの感情情報機能説についてです。

記述 ウ ですが
フォーガスは、社会的判断に用いる方略を4種類に分類し、用いられる方略によって感情が及ぼす影響が異なると考える感情混入モデルを提唱しました。ヒューリスティックが「なんとなくの判断」といった感じなので、感情の影響を強く受ける方と判断するとよいのではないでしょうか。ヒューリスティックと動機充足型を交換すると妥当な記述となります。記述 ウ は誤りです。

記述 エ ですが
戸田正直のアージ理論は、人間の意思決定において、非合理な意思決定をさせるように見える感情・情動についての理論です。この理論では恐怖、不安、怒りといった感情は4つのアージに分類されます。そして、これらのアージは、野生環境において生存に有利な適応としての機能を有すると考えます。「ネガティブな感情は・・・適応的には機能しない」という記述は妥当ではありません。記述 エ は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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