公務員試験 2019年 国家一般職(行政) No.60解説

 問 題     

社会変動に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。
1.A.コントは,人間の精神は,順に,形而上学的,神学的,実証的という段階を経て発展するとし,その発展段階に対応して,社会は,順に,軍事的,産業的,法律的という段階を経て進歩するとした。

2.H.スペンサーは,社会を生物有機体と同質なものとして捉え,複合的な社会から,統合が進み単純化された社会へと変化していくとし,その社会モデルを「機械的連帯から有機的連帯へ」という図式で定式化した。

3.W.F.オグバーンは,習慣・法律・宗教といった非物質文化が時代とともに変化することに伴い,人間の生活様式をより快適にするための科学や技術といった物質文化が遅れて発展していくとする文化遅滞論を提唱した。

4.V.パレートは,資本主義がいずれは社会主義に行き着くとするマルクス主義的な発展段階説を批判し,全ての近代社会は,資本主義,社会主義といった社会体制の違いに関係なく,伝統的社会から高度大衆消費社会へと至るとする成長段階説を提唱した。

5.D.ベルは,1960 年代以降の社会変動の中で,財貨生産経済からサービス経済への移行,専門職・技術職階層の優位などにより,先進社会は工業社会から脱工業社会へと移行していくとする脱工業社会論を展開した。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

選択肢 1 ですが
A. コントは、人間の精神や人間知識の諸部門は、神学的すなわち虚構の段階、形而上学的すなわち抽象の段階、実証的すなわち科学的段階の三つの段階を経るという、三段階の法則を提起しました。形而上学的と神学的が逆です。対応する社会としては、産業的と法律的が逆です。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
「機械的連帯から有機的連帯へ」という見通しを立てたのは、デュルケームです。スペンサーは「軍事型社会」から「産業型社会」への進化を説きました。(H28no57)。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
「物質文化」と「非物質文化」が逆です。オグバーンの文化遅滞論は、「物質文化」の変化に比べ、文化・制度といった「非物質文化」がすぐには対応できず社会的不調和が生じるという考えです。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
記述は、ロストウの経済発展段階説です。パレートは、エリートの周流を提唱し、循環史観に基づきマルクス主義の史的唯物論(唯物史観)を批判しました。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当です。
ベルの脱工業化についての記述です。(H27no56)。

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