公務員試験 2019年 国家一般職(行政) No.50解説

 問 題     

動機づけ理論に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.G.E.メイヨーらは,ホーソン工場での実験を通じて,作業環境や条件と生産性との関係を考察し科学的管理法を提唱した。また,その実験においては,照明の明るさなどの作業条件と従業員の作業能率との間には直接的な関係が認められるとともに,人間関係などの職場の状況を改善することによって作業能率がさらに高まることが実証された。

2.A.H.マズローは,人間の欲求は,最低次欲求である安全欲求から最高次欲求である自己実現の欲求まで階層的に配列されていると仮定した上で,自己実現の欲求とは,他人からの尊敬や尊重を意味する名声や栄光に対する欲求のことであるとした。また,低次の欲求が満たされると一段階上の欲求の強度が増加するとした。

3.F.ハーズバーグは,職務満足に関連する要因には,会社の方針と管理,給与,対人関係などがあり,自分の職務を遂行する際の環境や条件と関係するものであるとした。一方,職務不満足に関連する要因としては,達成に対する承認,責任,昇進などがあり,自分の行っている職務そのものと関係するものであるとした。

4.D.マグレガーは,人間は自分で定めた目標のためには進んで努力するという考え方をX理論と定義し,組織メンバーを目標に向かって努力させるためには,命令,統制が必要であるとする考え方をY理論と定義した上で,企業の置かれた状況に応じてX理論とY理論を臨機応変に使い分けて,経営を行う必要があるとした。

5.E.L.デシは,内発的動機づけの理論を体系化し,内発的に動機づけられた行動とは,人がそれに従事することにより自己を有能で自己決定的であると感知できるような行動であるとした。また,有能さや自己決定の感覚を経験したいという欲求は,人間が生来的に持っているものであるとした。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

選択肢 1 ですが
G. E. メーヨーらが行ったホーソン実験は、作業能率・生産性は、物理的環境条件や作業方法と一義的に結び付くものではなく、人間関係、監督の在り方、作業者個々人の労働意欲などと密接な関係があることを明らかにしました。(H30no50)。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
マズローの仮定した「自己実現の欲求」は、自分の持つ能力や可能性を最大限発揮し、具現化して自分がなりえるものにならなければならないという欲求のことです。「他人からの・・・欲求」は「承認欲求」です。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
F.ハーズバーグは、動機づけ衛生理論を提唱しました。これは、職場満足と職場不満は同一の要因ではなく、動機づけ要因が職場満足と関連し、衛生要因が職場不満と関連する、という理論です。(H29no49)。満足に関連する要因と、不満足に関連する要因が逆です。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
X 理論と Y 理論が逆です。命令、統制が必要と考えるのが X 理論です。(H27no49)。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当です。
デシの内発的動機づけ理論についての記述です。(参考 H28no50 選択肢 3)。

以上より、正解は 5 です。

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