薬物動態に起因する相互作用とは、具体的には、吸収、分布、代謝、排泄に関与する相互作用のことです。以下、それぞれ具体的に説明します。
【吸収における相互作用】
ある薬剤の吸収が、別の薬剤により変化する相互作用です。
代表例「テトラサイクリン や ニューキノロン系抗生物質(レボフロキサシンなど)+ 鉄剤、制酸剤」
メカニズムは、金属イオン (Fe2+ 、Mg2+ 、Al3+ など)と難溶性の複合体(キレート)を形成。溶けなくなるから、吸収低下。「セフジニル+鉄」 も 同様の理由。※セフェム系は吸収が悪いものが多いのですが、セフジニル(セフゾン)は吸収がよく広く使われています。だからこそ相互作用で吸収が悪くなるものをしっかりと意識する必要があります。
「アニオン性薬物(ワルファリン、プラバスタチンなど)+コレスチラミン(陰イオン交換樹脂の一種)」
メカニズムは、コレスチラミンがワルファリンやプラバスタチンを吸着し、吸収を低下させる。(コレスチラミンは、ものを吸着して、そのまま吸収されずに排泄される)
また、GER(胃内容排出速度)が 抗コリン薬の投与で遅くなること 及び、GERがメトクロプラミドの投与で速くなることに注意が必要です。この影響は、併用薬物によって様々なパターンが見られます。
代表例「アセトアミノフェン+抗コリン薬」
GER↓ に伴い、アセトアミノフェンの吸収が「低下」。※ GER ↓ だからって、併用薬物の吸収が低下と決まっているわけではない点に注意!
【分布における相互作用】
薬剤の分布が、併用薬により影響を受ける相互作用です。
代表例「ワルファリンとインドメタシン」
メカニズムは、結合部位における競合阻害 → 非結合型薬物の血中濃度が上昇、薬効が増強。出血傾向大。(インドメタシン自体の作用機序による薬力学的相互作用(次節の内容)もあります。)
【代謝における相互作用】
薬剤の代謝が、併用薬により影響を受ける相互作用です。特に CYP に関連する相互作用が重要です。また、薬だけでなく、喫煙や食事との併用でも大きな影響があります。以下、CYP のサブタイプ別に相互作用を列挙します。
CYP1A2
喫煙で誘導を受ける。 →テオフィリン等の作用が減弱。
CYP3A4
フェノバルビタールなどで誘導を受ける。マクロライドで阻害される。※15,16員環マクロライドの、アジスロ、ジョサマイシンはほぼ阻害しない。
また、CYP 3A4 は、セントジョーンズワート(気分を整えるハーブの一種)で誘導を受け、グレープフルーツジュース(GFJと略されます。)で阻害される。
CYP全般
アゾール系 及び シメチジンで阻害される。
CYP 以外の代謝酵素に関する相互作用として、MAO に関する相互作用が知られています。
代表例「MAO 阻害薬であるセレギリンと、MAO で代謝される SSRI(フルボキサミンなど)」
【排泄における相互作用】
薬物の排泄が、併用薬により影響を受ける相互作用です。「分泌過程」において同じトランスポータで輸送される薬物同士が競合し、排泄阻害されることがあります。
代表例「プロベネシド+メトトレキサート」
メカニズムですが、共に有機アニオントランスポーターにより分泌される薬物のため、分泌が抑制されて、血中濃度が上昇。また、「再吸収」において併用薬の影響で pH が変化し、それに伴い薬物の再吸収に影響が及び血中濃度が変動することがあります。
代表例「アセタゾラミド+炭酸水素ナトリウム」
pH が、炭酸水素ナトリウムにより大きくなり、アセタゾラミドのような弱酸性物質は再吸収減少になる。(イオン形が多くなるから。)
+α P – 糖タンパク質(P-gp) 関連。
P – gp は、様々な薬物を基質とするため、薬物併用により競合がおきることがあります。代表的な基質として、ジゴキシン、シクロスポリンをまずは憶えるとよいと思います。
以上です。
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