腎における排泄機構

※本項目は、生化まとめ 腎臓、膀胱の機能と構造 の内容を前提とします。

腎臓における排泄は、大きく3つの過程によります。1:糸球体ろ過、2:尿細管分泌、3:尿細管再吸収 です。イメージは以下になります。

※分泌は、主に近位尿細管。
※再吸収は尿細管のあらゆる所と考えて OK 。

それぞれの過程について、詳しく説明していきます。

【1:糸球体ろ過】
糸球体ろ過された液体を原尿と呼びます。原尿には、薬物など様々な物質が含まれます。糸球体ろ過により通過できる物質は、糸球体の基底膜による 「サイズ(分子量)バリア+チャージ(負電荷)バリア」 を通過できる物質です。

具体的には、低分子 かつ 負電荷なし の物質 が糸球体ろ過により通過し、原尿に含まれる物質となります。低分子はほぼ通過なので、大抵の薬物は通過し、原尿に含まれます。ただし、血中タンパク質に結合している薬物は、糸球体を通過せず、原尿に含まれません。タンパク質は原則、通過しません。なぜなら、サイズが大きいし負電荷を帯びているからです。

※何らかの原因でタンパク質が糸球体を通過すると、尿タンパク質が出ます。一方で、血中タンパク質が減ります。糸球体腎炎が代表的原因です。

糸球体ろ過速度を GFR と呼びます。100mL/min ぐらいです。GFR の測定は、イヌリン(糖の一種)を投与し尿排泄を測定すれば理想的です。ただし、イヌリンの投与から何時間も尿を採取して溜める必要があります。時間がかかるので実際には、採血により「血中クレアチニン値」を測定し、そこから計算する eGFR という値から GFR を推定します。eGFR とは、たくさんの患者のデータをもとに、血中クレアチニン値、年齢、性別からGFR を簡便に推定する値のことです。

【2 尿細管分泌】
「尿細管の周りの血管を流れる血液」 から 、「尿細管」 への物質の流れ を尿細管分泌 といいます。主に 近位尿細管で行われ、担体タンパク質である様々なトランスポーターが関与する過程です。代表的トランスポータが、有機アニオン系トランスポータ(OAT)です。アニオン(陰イオン)系の物質を輸送します。運ばれる代表的薬物は、キニジン 、メトトレキサート、プロベネシド です。

(残りは余裕あれば。有機カチオン系 → シメチジン、メトホルミンなど。P-糖タンパク質 → キニジン、ジゴキシンなど。)

【3 再吸収】
再吸収とは、「尿細管」から「尿細管の周囲の血管を流れる血液」への物質の流れのことです。近位尿細管における再吸収は、様々なトランスポータが関与します。遠位尿細管における再吸収では、単純拡散がメインとなります。単純拡散では、pH により再吸収される量が変化します

具体的な例として「サリチル酸」(弱酸性薬物の例)を投与時に、pH が低くなるとどうなるか考えてみましょう。弱酸性薬物は、pH が低い、つまり酸性環境において分子形率↑。これにより、単純拡散による再吸収量が↑。その結果、サリチル酸の腎排泄は、減少します。※この論理を自分で追えるように!

これら3つの過程を経て、尿として体外に、様々な物質が排泄されます。以上、腎における排泄機構です。

コメント