薬物取り込み後の、組織間濃度差が生じる要因

薬物が吸収され、循環血に乗ると全身の組織へと分布します。イメージをつかむために、お酒を飲んだ時をイメージしてみてください。ある程度お酒を飲むと頭がふらふらし(脳へのアルコール以降の影響)、全身が真っ赤になります。(全身に分布し、血管が拡張。)アルコールの「全身への分布」が実感できるのではないでしょうか。

もう1例とりあげてみます。風邪をひき、解熱鎮痛剤を飲む時はどうでしょうか。熱が出てぼーっとしていて、頭が痛かったのが、数十分すると、痛みがやわらぎ、熱がひいてきます。一方で、アルコールの時と異なり全身が赤くなるといった反応があるわけではありません。(稀に、アレルギー反応としてじんましんなどが見られる人もいます。)

もちろん、アルコールと風邪薬という物質の違いもあり、印象のレベルでよいのですが風邪薬の場合は脳への分布が多く他の所にはあまり分布していないような印象を受けるのではないでしょうか。事実、薬物によって各組織へ移行する割合は、様々に異なります。

薬物が吸収された後に、脳、皮膚、筋肉などの組織間に分布する際なぜ濃度差が生じるのでしょうか。これは、様々な要因が絡み合っています。すなわち
・組織における血流量
・組織付近の毛細血管の形状
・組織内における薬物結合成分の種類や割合
・脂溶性に伴う組織の親和性の違い 更には
・能動輸送による取り込みや排泄・・・ といった数多くの因子が、複合的に関与しています。(何となく、色々ある ぐらいでいいと思います。)

組織間の濃度差が生じる要因に関して知識としておさえておきたいのは以下の2点です。1点めは「脂溶性の高い薬物は、脂肪組織へ蓄積を見せる」です。ちなみに、脂肪組織は血流量は少ないです。そのため、薬物は徐々に移行しなかなか消失しないという特徴があります。

2点めは「薬物の一部は、リンパ管系を介して組織へ移行することがある」 です。特に、分子量 5000 以上の薬物がリンパ管系へ移行する傾向にあります。リンパ液の流れは血流と比べればとても遅いので、リンパ管系を介した薬物の移行は、ゆっくりと進みます。以上です。

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