吸収に影響する因子として重要なのは、以下の4つです。1:pH、2:非撹拌水槽の存在、3:製剤の影響、4:併用食や胃内容排出速度といった外的因子です。それぞれについて、以下詳しく見ていきます。
【pH の影響】
消化管から細胞膜を通過して血管内へ移行するためには、薬物は分子形である必要があります。いいかえると、イオン形は細胞膜を通過できません。医薬品のイオン形と分子形の比率は、薬物の pKa と、その場の pH により決まります。ちなみに「薬物の分子形/イオン形 の割合」により吸収が支配されることを 「pH 分配仮説」 と呼びます。仮説 とあるように、成り立たないパターンもありそれは非撹拌水槽の存在などの影響です。
【非撹拌水槽の影響】
非撹拌水槽とは、消化管膜表面における、ある程度の厚さの水層です。実体は、細胞膜表面から伸びる糖鎖により流動性が抑えられている水層です。濃い砂糖水、水飴のようなものがでろっと膜表面に塗られているイメージです。大きめの流れる川を考えた時に、表面はなかなか激しく水が飛び散っているけど、深く潜り川底についてみると静かで、全然流れがないです。この、川底付近とイメージしてもよいかと思います。
撹拌されていないことから、受動拡散によって物質の拡散が進行します。水層ですので、薬物の脂溶性が高いと通過しづらいです。ところが、ここを通過していざ消化管膜に到達すると、ここは細胞膜なので脂溶性が高くないと通過しにくいわけです。このような層があるため、単純な pH 分配仮説に従って「分子形が多いから吸収されまくるんじゃない?」という予測が成り立たないことがあるということです。
【製剤の影響】
そもそも錠剤の場合、崩壊→溶解 といったプロセスを経て初めて吸収されるので、どれだけスムーズにこれらの過程が進行するか、粒子径やコーティングといった要因が影響してきます。
【外的因子】
一緒に高脂肪食をとったかどうか や、胃に入った薬物がどれくらいの速度で小腸に到達するか(GER といいます。)といった影響もあります。GER の主要な変動要因としては、食事や抗コリン薬で、遅くなります。空腹やメトクロプラミドの投与で、速くなります。
受動的吸収による薬物ならば、GERが速くなると濃度勾配が大きくなります。(どぱっと消化管に薬物が運ばれるため。※ただし、これは運ばれてきただけ。ここから吸収が始まる。コミケで開門した瞬間の、メッセやビッグサイトの人口密度の急上昇が個人的に一番しっくりくるイメージです。)このため、吸収は速くなると考えられます。一般的に、空腹時の方が栄養をとろうと速攻で吸収できる!のイメージでいいと思います。
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