酸塩化物・酸無水物・エステルの反応

前項でも説明したとおり、カルボン酸誘導体の反応は、主には付加-脱離機構による求核置換反応です。

カルボン酸誘導体といえば、酸塩化物・酸無水物・エステル・アミドなどがありますが、このうちアミドを除く3種に関しては似たような反応をするため、以下でまとめて説明をします。

アミドは他に比べて反応性が低く、反応の内容も少し変わってくるので、アミドの反応のページにて扱います。

加水分解

酸塩化物や酸無水物、エステルなどに対して水が求核攻撃をすると、加水分解を起こしてカルボン酸が生成します。

例えばエステルを基質とした反応機構を以下に示しますが、この反応は水だけでは起こらず、酸または塩基が必要となります。また、酸条件では可逆反応である一方、塩基条件では不可逆反応であるというのが特徴的です。

酸条件

塩基条件

アルコールの求核置換反応

求核剤がアルコールだと、基質のカルボン酸誘導体はエステルに変わります。

もしも基質がエステルであれば、基質も生成物もエステルとなるので(R の部分は異なりますが)、その反応をエステル交換反応と呼んだりします。この反応も酸か塩基が触媒として必要ですが、どちらの場合も可逆反応となります。

アミンの求核置換反応

求核剤がアミンだと、基質のカルボン酸誘導体はアミドに変わります。

ヒドリド還元

水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)によって酸塩化物・酸無水物・エステルは還元され、第一級アルコールとなります。

ヒドリド還元の試薬として有名なものには LiAlH4 と NaBH4 がありますが、NaBH4 では反応性が低く、カルボン酸誘導体は還元されにくいです。

基質がアルデヒドやケトンの場合には、どちらの還元剤でも還元反応が起こります。(参考:求核付加反応・ヒドリド還元

次の項でも引き続き、酸塩化物・酸無水物・エステルの反応について扱います。重要な有機反応である 2 つの反応、Grignard 試薬を用いる反応と、Claisen 縮合を解説します。

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