求核付加反応・ヒドリド還元

前項にて、アルデヒド・ケトンの反応は

  • 求核付加反応
  • α水素での反応
  • その他の反応

に大別できると説明しました。この項と次の項では、最初の「求核付加反応」について解説をしていきます。

カルボニル基(C=O)において、O の電気陰性度が高いため、C は δ+ に帯電しています。求核付加反応は、求核剤が δ+に帯電した C を攻撃するような付加反応です。

水和反応

求核付加反応のうち、水が付加するような反応を「水和反応」といいます。この反応はもともと反応性が良くありませんが、酸または塩基を触媒とすることで反応速度が上がります。

酸・塩基触媒下での反応機構は以下のようになっています。

酸条件

塩基条件

アルコールの付加反応

酸または塩基性触媒下で、アルデヒド(またはケトン)にアルコールを反応させると、アルコールが 1 分子付加してヘミアセタールとなります。ヘミアセタールとは、1 つの C 原子に-OH 基と-OR 基が結合しているような化合物です。

または酸触媒下のときは、もう 1 分子のアルコールが付加して、アセタールとなります。アセタールとは、1 つの C 原子に-OR 基が 2 つ結合しているような化合物です。

酸条件

 ヘミアセタールの生成反応

 アセタールの生成反応

塩基条件

 ヘミアセタールの生成反応

ヘミアセタールができる反応もアセタールができる反応も、どちらも可逆反応です。

シアン化水素の付加反応

シアン化水素(HCN)も水やアルコールと同様にアルデヒド(またはケトン)に対して求核付加反応が起こります。生成する化合物はシアノヒドリンと呼ばれます。

ヒドリド還元

水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)や水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)を用いることで、アルデヒドやケトンを還元し、アルコールを生成することができます。まずは下の反応機構を見てください。

H は水素の陰イオンですが、ヒドリド(またはヒドリドイオン)と呼ばれます。H+ (プロトン)と対比させて覚えてください。LiAlH4 や NaBH4 はヒドリド供与体として有名な試薬であるので、上図のような反応が起こります。

ここで、基質がアルデヒドであれば第一級アルコールが生成し、基質がケトンであれば第二級アルコールが生成します。

また、LiAlH4 と NaBH4 の違いとして、LiAlH4 のほうが強い還元剤です。今回のように基質がアルデヒドやケトンであれば、どちらもヒドリド還元が起こりますが、基質がカルボン酸やエステル、アミドだと、LiAlH4 なら反応し、NaBH4 では反応が起こりません。

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